ゲリラ豪富が激増 落雷でPCが起動しない事態も……
今シーズンの夏は関東でゲリラ雷雨が多発し、株式会社ウェザーニューズの記事によると落雷回数は昨年の約1.7倍だったという。落雷による社内の急な停電は、社内のパソコンだけでなく、HDDに負担がかかってしまう。異常な過電流・過電圧の「雷サージ」と呼ばれる現象によって、パソコンや電子機器などの損傷を招く恐れがあるためだ。
弊社にも様々な企業から、「会社の近くで落雷があり社内のファイルサーバーにアクセスできなくなった」「落雷で停電し、共有で使っているNASが立ち上がらない」といった相談が寄せられる。落雷によるデータの破損を防ぐため企業の情報システム担当者はどのように対応するべきなのか。以下に実際に雷の被害にあった2社の相談事例を紹介し、見解を述べる。
今年の7月、都内で建設業などを手掛けている会社で落雷の被害を受けた。落雷が発生したのは土曜日。社員が週明けの月曜日に出社した際、パソコンの電源が入らず落雷被害を確認した。落雷により社内にある複数のパソコンの電源が付かない状態に。データのバックアップはとっておらず、すぐに使う図面やパソコン上で設計や製図をするツールのデータが消失してしまった。社員がデスクトップパソコンからHDDを取り外し、違うPCに接続してみるものの動作音もなく、認識もされなかったため、メーカーに相談。メーカーからはデータが消えてしまうと回答があり、弊社に復旧相談がきた。落雷原因でパソコンが動作しなくなる理由で一番多いのが、ハードディスクの基板が壊れてしまうことだ。基盤が故障するとハードディスクが正しく動作しなくなり、データが読み取れなくなってしまう。
電気によるショートや過電圧が主な原因で、雷が近くに落ちてその影響でコンセントを通して異常な電圧がパソコンやハードディスクに流れ込むと、過剰な電圧に耐えられず部品が壊れてしまうことが多い。エンジニアが診断したところ、基盤が破損していると判明し、部品交換を行い、データ復旧に成功した。
さらに、今年8月、関西で製造業を手掛けている会社でも落雷による停電が発生。経理部で使っているパソコンが使えなくなってしまった。HDDから異常音が鳴り響き認識しない状態に。直近の決算に使う必要なデータが入っており、経理作業に影響が出る前に、弊社に復旧相談の依頼がきた。エンジニアが診断すると、ハードディスクの中にあるデータを記録する「プラッタ」にデータを読み書きする「磁気ヘッド」が落雷による衝撃などで直接触れてしまいプラッタに傷がつき、データが読み込めなくなっていることが判明。部品交換を行い、ハードディスクを正常に動かし、ディスクの表面についている磁気ヘッドを慎重に離し、データ復旧した。
では、上記の2社は、どのように対策すれば落雷被害から機器を守ることができたのか。
そもそもハードディスクは精密な機器なので少しの衝撃や不具合でも大きな損傷を受けてしまう恐れがあることを再度認識していただきたい。
まず、停電や落雷の恐れがある場合は、瞬電を防ぐため機器の電源を切りコンセントを外すようにしてほしい。普段使っているHDDなどが停電により電源が入らなくなってしまう原因は、過電流で生じる「ショート」と電気の供給が一瞬止まる「瞬断」が故障の主な原因となるからである。
また、落雷後の対応も適切に行うことでデータの回復が見込める場合も高まる。落雷後、機器が物理的に損傷している可能性がある場合は、無理に電源を入れるとデータがさらに破損するリスクがあるので、落雷被害に遭ってしまった際は自力で何とかしようとせずに、すぐに専門的な対応をデータ復旧業者に依頼するのが最も安全である。
「雷が落ちたあとにパソコンがブルースクリーンになってしまった」という相談も多い。その場合は、雷の衝撃によりパソコン内部のデータが破損している可能性が高いので、使い続けるとデータ損失だけでなくアクセス不能になるケースも高まるので注意が必要だ。
日頃からできる備えとしては、無停電電源装置(UPS)を導入することが望ましい。急な電力の供給停止でもデータの消失を防ぐことができ、電源が安定するまでの間に安全にシャットダウンできる時間を確保できるからである。事前のUPSや定期的なバックアップアップといった対策をしていれば落雷によるダメージを最小限に抑えることができる。
後編の記事では、地震被害が起きる前に企業ができる対策、起きた後にどのように対処すればいいのか、また企業が行うべきBCP対策について詳しくお伝えする。