分散拠点企業向け「Azure Local」とは
Copilot & AI Stack
ナデラ氏によれば、「マイクロソフトの『Copilot & AI Stack』へのアプローチはとてもシンプル」だ。それは、Copilot、エージェント、そしてCopilot Studioで構築したアプリケーションを全て取り込み、テクノロジースタックを構成する「インフラストラクチャー」「データ」「AIアプリケーションプラットフォーム」「開発ツールとアプリケーションサービス」の全てのレイヤーのテクノロジーを用いて、企業が独自のCopilotとエージェントを構築できるようにするものだ。
マイクロソフトはレイヤーそれぞれに新しい機能への投資を実行している。まず、「インフラストラクチャー」レイヤーでは、データセンターへの投資を続けている。過去1年間、マイクロソフトは世界15カ国でデータセンターへの投資を実施した。現在、マイクロソフトは世界60超のリージョンで、データセンターを運営している。直近では建設方法もサステナビリティ重視だ。たとえば、米バージニア州北部にある2つのデータセンター建設では、CO2排出量削減のためにCLT(Cross Laminated Timber)を資材に採用した。従来の鉄骨造と比べ、35%のCO2排出量削減効果を実現できたという。
ネットワークレベルでは、次世代の光ファイバーテクノロジーとして注目の集まる「HCF(Hollow Core Fiber:空孔コアファイバー)」に積極的に投資している。従来型の光ファイバーと比べ、内部構成が全く異なるHCFは、高速大容量のデータ通信ニーズに応えられるとして期待されている。特にデータセンター間の接続で重要なのがファイバーの接続損失の低減である。2024年初めに史上最低水準の損失実証が確認できたことを受け、マイクロソフトではHCFケーブルの生産ルートを確保しており、向こう24カ月で15,000kmの追加を見込んでいる。
Azure Local
ナデラ氏は、Microsoft Azureを拡張する「Azure Local」を発表した。Azure Localは、クラウドとエッジにまたがるグローバルインフラの運用をサポートするもので、ハイブリッド環境、マルチクラウド環境、エッジ環境のいずれでも、共通データ基盤の利用、アプリケーションのデプロイ、統合的な運用とセキュリティが可能になる。小売業、ホスピタリティ業、製造業のように、分散した拠点を多く持つ場合でも、Azure Localを使うことで、ミッションクリティカルなワークロードやAIワークロードを柔軟に実行できるようになる。
Microsoft FabricにSQLデータベースが利用可能に
Microsoft Fabric
データなしではAIは何もできない。続いての「データ」レイヤーでは、「データ分析プラットフォーム『Microsoft Fabric』が中核になる」とナデラ氏は説明した。Microsoft FabricはIgnite 2023で発表されたもので、AIレディのデータレイク「Microsoft OneLake」で、全てのデータを管理することを大きな特徴としている。データがオンプレミス環境にあっても、クラウド環境にあっても、また、Azureではなく、AWSやGoogle Cloudにデータがある場合も同じようにデータ統合ができるようにしている。発表以来、すでにFortune 500の70%を含む16,000社超がMicrosoft Fabricを導入した。
Microsoft Fabricでデータレイクの次の強化の焦点となったのは、データベースである。これまでのデータアーキテクチャーでは、トランザクション処理用と分析用に別々のデータストアを必要としていた。そのため、2つのデータストア間で大量のデータのやり取りが発生していたが、簡素化のため、Microsoft Fabric上でMicrosoft SQL Serverを利用できるようにした。
Microsoft Fabric Databases
Microsoft Fabric Databasesは、トランザクション処理と分析の両方に対応するエンタープライズデータプラットフォームとして機能する。このデータベースには、Microsoft Fabric共通のセキュリティとガバナンスポリシーが適用される。また、Microsoft FabricはVisual Studio CodeやGitHubなどの開発者ツールと統合されているため、この中のデータ資産を活用してのアプリケーション構築も容易になる道筋ができた。
DiskANN
ナデラ氏は、マイクロソフトがデータレイヤーで注力していることの1つとしてベクトル検索を挙げた。「DiskANN」は、レイテンシーが低く、コスト効率よくベクトル検索を行うためのアルゴリズムとしてMicrosoft Researchが開発したものである。すでにBingでは、4,000億超のベクトルインデックスにこのアルゴリズムを適用している。ナデラ氏はこのDiskANNアルゴリズムを、Azure Database for PostgreSQLとAzure Cosmos DB for NonSQLに適用すると発表した。