「AI主権」を自社で握る、人材ポートフォリオ変革も加速(富士通 福田譲氏)
2024年を振り返って
2024年は、富士通グループにおけるOneFujitsuの取り組みにおいて大きなマイルストーンを達成した年でした。
10月に4万ユーザー規模でグローバルERP(RISE with SAP)を国内において稼働させ、データドリブン経営への基盤を整えました。グループ・グローバル統合データレイクであるOneDataは稼働2年目を迎え、8万人超がBIツールを活用した意思決定を始めています。
3万人以上の社員が日常的に生成AIを活用し始めており、AI時代を見据えたデータガバナンスの重要性を改めて認識した年でもありました。非定型業務のデジタル化(OneDigital)の全社イニシアチブを開始、デジタルツールやデータ、AIによる「仕事の再発明」を通じて、中期計画で掲げている「生産性40%向上」を目指しています。
また、サイバーセキュリティの脅威はますます高度化しており、意識改革とレジリエンス強化に注力、「攻めの革新」に加えて「守りの革新」の重要性を再認識した年でした。
富士通
執行役員 EVP CDXO(最高デジタル変革責任者)兼 CIO(最高情報責任者)
福田譲氏
1997年SAPジャパン入社、23年間勤務、2014-2020年の約6年間、代表取締役社長。2020年4月、富士通に入社、現職。CDXO(最高デジタル変革責任者)および社内ITの責任者CIOとして、同社自身のDX、日本型DXの探索・実践とフレームワーク化に取り組んでいる。「日本を、世界を、もっと元気に」がパーパス。
2025年の展望
2025年は、AI活用による経営・業務変革のインパクト創出に注力します。AIの主権を自社で握り、最適化されたデータ&AIアーキテクチャの構築を通じて、「自社データや社内ナレッジの反映」を本格化します。
今まで個別に導入してきた様々なAIやSaaS内包のAIを横断して、ガバナンスを含め統合管理するプラットフォームを構築し、「AIの主権」を自社が握る環境を整備します。
また、海外拠点で進めている富士通グループ・グローバル統合人事プラットフォーム「OnePeople」を2025年に稼働させ、人的資本経営と人材ポートフォリオ変革の加速・AI人材の育成に力を入れます。
2025年は、AI主導の未来に向けた重要な転換期になると考えており、「標準性の高いデータを全社に最適な形で生成・利活用するメカニズムと組織体制」の構築、グローバル業務シェアードなどのオペレーショナルエクセレンスへの取り組みを本格化します。
5年目に入る全社DXプロジェクト「フジトラ」を通じて、より一層、社員の意識・スキル・行動変容を進めます。
サイバー戦線が拡大、日本のセキュリティの真価が問われる年に(NTT 横浜信一氏)
2024年を振り返って
2024年は、NTT西日本で発生した内部不正に起因するインシデントを契機に、グループ全体で重要情報漏えい防止策を一層推進した1年でした。対策の中には、約300ある国内事業会社のすべての社長が3時間のセキュリティ研修を受ける「社長向けセキュリティ研修」もあります。対策は全体として計画通りに進んでいますが、サイバー脅威の進化スピードを考えると私はまだまだ道半ばと受け止めています。
加えて、先日能動的サイバー防御に関して有識者会議から提言が出されたように、サイバーセキュリティが経済安全保障・国家安全保障と密接不可分となり、セキュリティ組織にとっては「戦線拡大」の一年になりました。NTTでも国家を背景とした高度な攻撃を念頭に置いたスレットハンティング、万が一の有事に備えるための、重要インフラ事業者の皆さまとの協力関係強化などに着手しました。
日本電信電話(NTT)
グループCISO
横浜信一氏
NTTグループ全体のCISOとしてサイバーセキュリティ確保を担う。また、パブリック・アドボカシー活動にも従事し、政府、産業界、学界に向けた意見・情報発信に取り組む。著書に「サイバーセキュリティ戦記」(リックテレコム、2023年6月)、「経営とサイバーセキュリティ」(日経BP、2018年3月)などがある。2023年6月からはNTTセキュリティ・ホールディングスの社長も兼務。
2025年の展望
2025年、AIの利用が社会に広がっていく中で、システムプロンプトを狙うなどAIシステムを狙ったサイバー攻撃が編み出され、それを支えるインフラまでもが出現しつつあります。また、AIを活用して攻撃の生産性を高める傾向も続くでしょう。この結果、残念ながら企業が受けるサイバー攻撃の数は幾何級数的に増加すると想定しています。
米国をはじめ世界各国で新しい政権が生まれていますが、ここ数年の規制・政府関与強化の世界的な潮流は変わらないと予測します。日本へのサイバーセキュリティ能力の強化も今まで以上に求められることでしょう。能動的サイバー防御の法整備の行く末も注目されます。
だからこそ、日本のIT資産の9割以上を保有する企業のサイバーセキュリティ力も真価が問われる年となります。NTTはセキュリティの基本である「被害最小化を目指したリスク・ベース・マネジメント」を旨として、自助・共助・公助の優先で取り組んでいきたいと思います。