Qlikは、4,200人の経営幹部、およびAIに関する意思決定者を対象とした調査結果を発表した。
調査概要
- 調査対象国:日本、英国、フランス、ドイツ、オランダ、イタリア、スペイン、スウェーデン、米国、カナダ、メキシコ、ブラジル、サウジアラビア、UAE、南アフリカ、インド、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドの19市場
- 調査数:4,200の企業
- 調査対象者:従業員数500~4,999人の大企業で働く上級管理職
- 調査方法:オンライン
- 調査期間:2024年11月
- 調査機関:Qlikの委託により3Gemが実施
同調査により、日本の回答者の54%(グローバル:61%)が、経営陣、従業員、そして顧客からのAIに対する信頼の欠如に苦しんでいることがわかったという。さらに、AIスキル不足、ガバナンスの問題、リソース不足もAI導入を成功させるうえで障害となっており、多くのプロジェクトが計画段階で足踏み状態となっているとした。
一方、企業がAIソリューションの導入を始める際には既製のソリューションが世界中で好まれる傾向にあり、日本では61%(グローバル:73%)が肯定的な回答だったという。また、日本では65%(グローバル:87%)が、このテクノロジーへの投資回収に楽観的であることがわかったとしている。
多くのAIプロジェクトが計画段階で足踏み状態、または中止に
企業の成功を達成するうえで、AIの重要性が過小評価されているわけではないという。同社の調査によると、日本の経営幹部の80%(グローバル:87%)が、戦略目標の達成や利益の増加といった成功を達成するうえで、AIが絶対に不可欠または非常に重要であると感じていることがわかったとしている。
このような認識があるにもかかわらず、AIプロジェクトの多くは計画段階から完了または実装へと進まず、多くが中止されているという。実際、大企業の37%(グローバル:44%)では、10件以上のプロジェクトがスコープ設定または計画段階にあり、まだ実施の段階に至っていないとのことだ。また25%(グローバル:39%)は、10件以上のプロジェクトが計画段階またはそれ以降に進んだものの、中断もしくは完全に中止せざるを得なかったと回答しているという。
AIプロジェクト失敗の主な要因は信頼できるデータの不足、日本はグローバルより高い傾向
AIプロジェクトの遅延と失敗の原因は複数あるが、一番の要因はAIが使用するデータで信頼に足るものが少ないことだとしている。その割合は日本では30%と、グローバルの21%を大きく上回っているという。次に、AIが活用できるデータの不足(日本:24%、グローバル:19%)、AIの開発スキル不足(日本:24%、グローバル:23%)、データガバナンスの課題(日本:24%、グローバル:23%)、予算の制約(日本:20%、グローバル:21%)など、いくつかの大きな問題があるとしている。日本国内でのデータに関する懸念の割合は、全体的にグローバルよりも高い傾向にあるとのことだ。
国内の回答者の89%(グローバル:95%)が、どのような種類のAIが自社のビジネスに利用できるかを知っており、その必要性については理解していると答えたという。一方で、企業内の他の部門からの信頼が得られておらず、一部の企業でAIプロジェクトに乗り出す上で足かせになっているようだと同社は述べる。
AIに関する意思決定者のうち28%(グローバル:37%)は、上司がAIを信頼していないと回答し、37%(グローバル:42%)は、部下がAIを信頼していないと感じているという。一方で26%(グローバル:21%)は、顧客もAIを信頼していないと考えているとのことだ。
また、54%(グローバル:61%)が自社のAI投資を大幅に減らす要因になったのはAIに対する信頼の欠如だと考えているという。
企業とその顧客の間でより良い知識共有が行われれば、信頼が高まり、それにともなって投資も増加する可能性があると同社は述べる。国内の回答者のうち52%(グローバル:74%)が、自社内、および顧客に対してAIテクノロジーのメリットをより積極的にアピールしたいと考えているとのことだ。
世界的に、AIの導入を促進するには信頼関係の構築が最重要
従業員をスキルアップさせるためにAIトレーニングを提供することも、信頼を構築し、AIプロジェクトが計画段階から実装段階へ成功裏に展開されることを確実にするという。
グローバルでは、AIの意思決定者の65%(日本:48%)が、今後5年以内に自国がAIスキルで世界をリードする潜在能力をもっていると回答。これを実現するには、76%(日本:71%)が自社の業界ではAIに対応するための人材育成とスキルアップをより強化する必要があると信じており、75%(日本:67%)が政府はAIへの資金提供とトレーニングをより強化する必要があると考えているとのことだ。
【関連記事】
・「生成AI大賞」初代グランプリは名古屋鉄道が受賞、優秀賞にはUbie・弁護士ドットコムら8社が決定
・AIは「幻滅期」に突入か──タレス、2025年のセキュリティトレンド予測を発表
・6割が生成AIを全社導入済み RAGの採用も進む──Exa Enterprise AI調査