データセンターへの投資が“競合優位性”につながる理由は?
──Netskopeのネットワーク投資アプローチを知るうえで、他のクラウドプロバイダーでは一般的にどのような意思決定プロセスや基準が採用されているのか気になりました。
デパロ氏:まず一般的に、ネットワークの観点では、すべてのコンポーネントにおける物理的な制約を考慮する必要があります。異なる通信回線やポート、デバイスの使用可能な容量を同期させる必要があり、それがユーザーや通信量の消費バランスと整合するようにしなければなりません。
通信回線そのものは、アップグレードが最も容易な部分です。一方で、ネットワークハードウェア、つまりスイッチやルーターは最もコストがかかる部分です。そのため、通常はネットワークデバイスの設計から始め、必要と思われる最大規模までの構成を想定して構築し、需要に応じてスケールアップしていきます。
また、重要なポイントとして、リソースの使用率が50%に達した時点で、フェイルオーバーと冗長性を確保するために新たなコンポーネントを追加する場合が多いです。一般的なアーキテクチャでは、50%以上の容量で運用することを避けており、これが安定したネットワークの運用を支える基本方針となっています。
──では、Netskope独自のプロセスとは何でしょうか。
デパロ氏:我々も同様のプロセスを採用していますが、他社のようにプライマリとセカンダリの2つだけではなく、全部で3つのオプションを備えています。この設計により、リソースの使用率が30%を超える前に追加してスケールする体制を実現しています。仮に2つが故障した場合でも、3つ目がすべてを引き受けられるため、システム全体の安定性と信頼性を確保できるのです。
──セキュリティ対策を検討するうえで、多くのIT担当者は、対策すべき「脅威」に何よりも注目します。対策の実践前からソリューションのパフォーマンスや品質を真っ先に気にする人はそれほど多くないでしょう。Netskopeが投資に力を入れている「パフォーマンス」が、どれほどセキュリティ水準に影響を及ぼすのか教えてください。
デパロ氏:我々は、ネットワークやセキュリティデバイスによるパフォーマンスの問題が、ユーザーにとって大きな問題を引き起こす事実を観測しています。具体的な例を挙げましょう。仮にシステムが遅延したり、問題が発生したりすると、多くのユーザーは会社で管理していない私的なデバイスや携帯電話、あるいは個人のインスタンスを利用するようになります。
この行動は、新たなセキュリティの脆弱性を生み出しますよね。リテラシーの高いIT担当者ならこの間違いはしないでしょうが、果たしてすべての従業員がこうした行動を自制できるでしょうか。このリスクを潰す根本的な対策として、パフォーマンスは非常に重要なのです。
──パフォーマンスを改善するためには、利用するソリューションやサービスプロバイダーを切り替えるしかないのでしょうか。早急な対策として、ユーザー側のみで実践できるオプションがあればよいのですが。
デパロ氏:前提として、ネットワークには3つの異なるコンポーネントが存在しますよね。1つ目はユーザーのデバイス。これについては、変更の余地はほとんどありません。2つ目は二次的なパス。つまり、デバイスから目的地へとつながる経路のことですね。まさにNetskopeが積極的に投資している領域です。そして3つ目に、目的地そのもの、つまりサービス自体があります。この中で、実際に制御可能なのは、ユーザーと目的地の間に存在するパスだけです。
──76の都市でデータセンターを運営しているそうですが、国や地域ごとに多種多様な法律やセキュリティの要求、ルールなどがありますよね。また、近年は地政学的な観点から、データ主権などにも関心が集まっています。そうした潮流・ニーズに対するカバーはできているのでしょうか。
デパロ氏:おっしゃるとおり、セキュリティソリューションの管理においては、政府のファイアウォールやデータ主権、ユーザーエクスペリエンスなど、様々な要素を考慮する必要があります。Netskopeの場合、政府から特定の要件がある地域においては、これらすべてをサービスの一部として提供しています。
日本におけるデータ管理についても特別な配慮を行っています。すべてのプロセスが日本国内のデータセンター内で完結するよう設計しているのもその一環です。データやその処理、そしてユーザーはすべて日本国内にとどまります。また、複数のデータセンターでフェイルオーバーを実現することで、他国や地域にデータが移動するリスクを完全に排除しています。
繰り返しにはなりますが、これこそがNetskopeの競合優位性なのです。他社がパブリッククラウドを利用する中で、我々は独自のプラットフォームに機能を継続的に追加していくための、大規模なロードマップを持っています。これにより、市場での差別化と優位性を今後も維持していく所存です。