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週刊DBオンライン 谷川耕一

HashiCorp買収でIBMはどこを目指すのか──成功の鍵はOSSコミュニティとの関係維持?

巨額買収から透けて見える戦略、シナジー、課題を分析

 米現地時間2025年2月27日、IBMはHashiCorpの買収を完了したと発表した。HashiCorpは、クラウド環境におけるインフラ運用を自動化するためのソフトウェアなどを提供している。同社の中核となるソフトウェアはオープンソース(OSS)で固められ、世界中で多くの企業が利用している状況だ。今回の買収でIBMは、総合的なハイブリッドクラウド・プラットフォームの実現を目指すこととなるが、既にクラウドインフラの運用を自動化するためのソリューションがいくつかある。2019年に買収したRed Hatの「Ansible Automation Platform」も、その1つだ。では、HashiCorpを加えることで、IBMのソリューションはどのように変化するのだろうか。

IBMのHashiCorp買収、狙いはハイブリッドクラウド戦略の強化

 現状、多くの企業はハイパースケーラーが提供するパブリッククラウド、オンプレミスのデータセンターを含む、「ハイブリッドクラウド」環境下でシステムを運用している。DXを進めるには、これら異なる環境にあるインフラの管理・運用を“統合的”に扱える必要があるだろう。また、今後数年で起こる生成AIのさらなる進化によって、クラウドネイティブなアプリケーションが一気に増えると予測できる。AIのために必要なデータガバナンス確保の観点からも、インフラ部分はハイブリッドクラウドとなりそうだ。

 HashiCorpは、クラウドインフラストラクチャのプロビジョニングと管理を自動化する「Terraform」、IDベースのセキュリティを実現する「Vault」、サービスメッシュを構築する「Consul」など、クラウドインフラの構成を定義する際に重要な役割を果たすツール群を持つ。これらは開発者コミュニティなどをきっかけに、広く採用されてきた。既にFortune 500企業の85%がHashiCorpの製品を利用している[1]ことからも、市場での存在価値はそれなりに大きい。一方IBMではRed Hatの買収以降、ハイブリッドクラウドを将来的な“ITインフラストラクチャの中核”と位置づけている。まさにHashiCorpの技術は、IBMのハイブリッドクラウド戦略と合致するだろう。

 つまりHashiCorp買収の狙いは、IBMのハイブリッドクラウド戦略の強化であり、これによりAI分野への進出を加速させ、市場シェアを拡大することだと考えられる。そしてハイブリッドクラウド・インフラストラクチャの管理・運用を自動化することで、顧客企業のIT運用コストを削減したい動きとも捉えられる。

 IBMは、HashiCorpのツール群をIBM CloudやRed Hat OpenShiftなどの既存ソリューションに統合することにより、包括的なハイブリッドクラウド・プラットフォームを構築・提供していく。これはIBMにおけるAIアプリケーションの開発・運用基盤の構築や管理を自動化することになるため、同社のAI戦略を加速させる役割も担うだろう。

 また先述したようにHashiCorp製品の導入数は多く、その顧客基盤を獲得することも一つの目的と考えられる。IBMは、ハイブリッドクラウド市場におけるリーダーとなることを目論んでいるのだろう。

 ハイブリッドクラウドの主な利点は、俊敏性だ。企業はコンピュータリソースを迅速にプロビジョニングし、変化に追随していくことでビジネスチャンスを逃さないようにする。Terraformは、マルチクラウド環境全体でインフラストラクチャのプロビジョニングを自動化し、一貫性を確保することに役立つ。またVaultでは、ハイブリッド環境全体で機密データを保護するためのセキュリティ基盤を提供できる。

 一方でRed Hat OpenShiftは、コンテナ化されたアプリケーションの開発・運用プラットフォームだ。Terraformとの連携により、OpenShift環境の構築・管理も自動化できるだろう。またVaultとの統合で、OpenShift上で動作するアプリケーションのセキュリティを強化できる。

 さらにTerraformとAnsibleを組み合わせることで、インフラストラクチャからアプリケーションまで、一貫した自動化を実現できるようになるはずだ。たとえばTerraformでプロビジョニングされたインフラストラクチャを用いて、Ansibleインベントリを動的に生成したり、TerraformからAnsible Playbookをトリガーに設定したりできるだろう。

 加えて、HashiCorpのツール群と「watsonx」を連携させることも考えられる。AIモデルの開発・学習・デプロイを自動化し、AI開発の効率化を図ることはもちろん、VaultをIBMのネットワークポートフォリオと統合すれば、ハイブリッドクラウドのセキュリティ強化にもつながる。

 その上でIBMが保有しているFinOpsやテクノロジービジネスマネジメント(TBM)、オブザーバビリティツールとの統合も期待される。単にTerraformでクラウドインフラストラクチャを自動化し、運用を効率化するに留まらず、FinOpsでインフラストラクチャの選択によるコストへの影響を把握すること。さらにはビジネス貢献までに寄与するためには、Apptioを買収して得たソリューションといかに融合した形で顧客に価値提供できるかが鍵となりそうだ。

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成功の鍵はコミュニティとの関係維持、顧客への提案力

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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