日本に「BlueVoyant」上陸、サプライチェーンセキュリティの需要高まる中でどう事業を拡大する?
CEO 兼 共同創設者が来日、競合多き市場でも成長できる“自信”のワケ
今や自社のセキュリティを強化したところで、サプライヤーやベンダー、あるいは第三者との接続を通じて、知らぬ間に侵入されてしまう時代となった。こうしたサプライチェーンセキュリティの課題を解決する存在として、2025年4月に新たなセキュリティベンダーが日本へ上陸した。「BlueVoyant(ブルーボヤント)」だ。なぜこのタイミングで日本進出を決めたのか。多くの競合他社が事業を展開する中で、何を武器にシェアを拡大していくのか。来日したCEO 兼 共同創設者のジェームズ・ローゼンタール氏と、日本法人のカントリーマネージャーを務める内田太樹氏に話を伺った。
今が日本進出の好機、サプライチェーン全体のサイバー防御を提供する
米国ニューヨーク州に本社を置くサイバーセキュリティ企業であるBlueVoyantは、2025年4月22日(日本時間)、日本市場での本格展開を発表した。これまで40ヵ国以上で1,000社以上にサービスやソリューションを提供してきた同社は、2024年にMicrosoftの「Worldwide Security Partner of the Year」に選出されており、この受賞を足がかりに日本市場での事業拡大を加速させる考えだ。
BlueVoyantが“クラウドネイティブな統合プラットフォーム”と称し提供する「Cyber Defense Platform」は、企業の内部ネットワーク、外部のデジタルプレゼンス、さらにはサードパーティのエコシステムからの脅威を検出・調査・軽減するための包括的なサイバー防御機能を備えている。①サプライチェーン防御、②検出と対応、③デジタルリスク保護、④プロアクティブ防御に加え、全体のセキュリティ体制を可視化・最適化する⑤サイバーポスチャー管理の5つの主要領域をカバーしているとのことだ。
BlueVoyant最大の特徴は、企業の「内部」と「外部」の両方を防御できる点にある。同社のCEOであるジェームズ・ローゼンタール(James Rosenthal)氏は、「成功するサイバー攻撃の約3分の1は、サプライチェーンを介したものだ」と指摘する。大企業のサプライチェーンを構成する、中小企業を含む数千社の脆弱性をスキャンし、攻撃者が悪用する前に脆弱性を特定して対処できる点が、同社が提供するソリューションの肝なのだという。
「大企業の多くは1,000社以上のサプライヤーを抱えています。それらすべてが事業の中核的な存在ではないかもしれませんが、上流企業の業務にとって不可欠な存在です。攻撃者はそうした中小規模企業の脆弱性を探してスキャンし、それを足がかりに侵入を図ります。ですから、私たちは同じようにサプライチェーン全体をスキャンし、攻撃者よりも先に狙われる企業にアプローチして、何をすべきか伝えるのです」(ローゼンタール氏)
日本でも、下請け企業を含むサプライチェーン全体のセキュリティ確保は大きな課題となっている。リソース不足が避けられない中で、中小企業や各地域の下請け企業まで防御を行き届かせることは困難だ。日本でカントリーマネージャーを務める内田太樹氏は、こうした課題に対して「BlueVoyantのアプローチが有効になるはずだ」と強調した。
なぜ、BlueVoyantはこのタイミングで日本進出を決めたのか。これまで、日本にも顧客自体は抱えていたというが、日本法人の設立には至っていなかった。ローゼンタール氏はその理由について、「グローバルな実績を積み、ようやく適切なパートナーシップを構築できる段階に達したからだ」と説明した。
「日本市場は私たちにとって“最も可能性がある市場”だと考えています。日本のお客様は何年も前からいらっしゃったのですが、日本に拠点を構える適切なタイミングと適切なパートナーを探していたのです。そして、今がその時だと確信しました」(ローゼンタール氏)
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森 英信(モリ ヒデノブ)
就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...
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名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)
サイバーセキュリティ、AI、データ関連技術やルールメイキング動向のほか、それらを活用した業務・ビジネスモデル変革に携わる方に向けた情報を発信します。
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