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EnterpriseZine Press

大企業が「AIの万年PoC」から抜け出す鍵はスタートアップに?日本市場に秘められたAI活用の伸びしろ

日本は国際的なAIルールメイカーになれる──産官学の視点でAI最新動向を議論

 各国が成長戦略とガバナンスの両立をめざしてAI政策を競うなか、日本においてもAI活用における実践的な方向性が求められている。こうした潮流を背景に、日本ディープラーニング協会(JDLA)はAI利活用の在り方を探るカンファレンス「JDLA Connect」を開催した。基調講演には、JDLAの理事長を務める東京大学大学院工学系研究科 教授 松尾豊氏をはじめ、同協会理事の江間有沙氏、岡田陽介氏、竹川隆司氏が登壇し、「AI戦略とガバナンス」をテーマにパネルディスカッションを実施。「国際動向」「ビジネス」「人材育成」という3つの視点から、AI利活用に不可欠な戦略とルール形成の在り方について議論が交わされた。

今見えるリスクへの対応では不十分、未来を見据えたAI政策を

 パネルディスカッションに入る前に、松尾氏からAI技術やそれにともなう規制について最新動向が紹介された。2025年1月には、中国のスタートアップ「DeepSeek」が数億円規模のGPUでAIモデルを開発し、「DeepSeekショック」と呼ばれる衝撃が世界中に走ったことは記憶に新しい。同年2月にはOpenAIが調査タスクを自動化するAIエージェント「OpenAI Deep Research」を発表し、その利便性に注目が集まっている。さらに同氏は中国発のAIエージェント「Manus(マヌス)」の高精度な分析能力などを例に挙げ、AI技術が急速に進展していることも指摘した。

 フィジカルAI領域では、Physical Intelligence社による汎用ロボットプラットフォーム「π0」が発表され、一連の家事タスクを行えることで注目が集まった。Googleは、Geminiを搭載したロボット実現に向けた新たなAIモデルを発表し、高度な指示理解能力が示されている。

 革新的な技術進歩が続く一方、AIのリスクを抑えるべく政府が主導する規制の動きについても言及された。日本政府は、2023年5月に設立したAI戦略会議と、2024年8月から開始されたAI制度研究会の議論を経て、2024年12月に中間取りまとめを実施。これについて松尾氏は、「技術が急速に進化していくなかで、現状見えているリスクだけに対応するのでは明らかに不十分。将来の技術進展にともなって新たに生じるリスクにも対応できるよう、政府が司令塔機能を持ち、調査する力を持つことの重要性が訴えられています」と解説した。

 この中間取りまとめで議論されたAIに関する法制度について松尾氏は、「たとえばAIを使って詐欺が行われたとしても、それは詐欺に関する現行法で取り締まれるし、AIを使った武器の製造も武器製造に関する法律で対応できます。AIを使うことで発生する特有の問題が本当に存在するのかが大きな議論のポイントです」と語り、「将来現れるであろうリスクを適切に監視しながら、必要に応じて現行法を適用していくことが重要だと考えています。そのためにAI事業者が透明性と安全性を確保して進めていく必要があるでしょう」と指摘した。

 中間取りまとめの内容を受け、2月28日に閣議決定されたAI法案では、「AIのイノベーション促進」と「リスクへの対応」はトレードオフではなく、両立するという基本的方針が示されたという。日本では特にリスク対応の枠組みが明確でないと、AI活用に二の足を踏む傾向がある。どこまで許容され、何が禁止されるのかを明示することで、むしろイノベーションを促進できるという考え方だ。松尾氏は「このような議論は国際的に見ても非常に進んでいます。日本が国際的な議論をリードすることは引き続き重要だといえます」と強調した。

東京大学大学院工学系研究科 教授/一般社団法人 日本ディープラーニング協会 理事長 松尾豊氏

日本はAIの国際的なルールメイカーになれる?

 続いて、AI戦略とガバナンスに関する3つのテーマをもとにパネルディスカッションが展開された。最初のテーマとして示されたのは「国際動向」。東京大学国際高等研究所東京カレッジ 准教授の江間有沙氏は、「AIガバナンスを取り巻く議論は生成AIでいきなり出てきたものではなく、様々なマルチステークホルダーと国際的な議論の上に成り立っている」ことを前置きし、AIガバナンスを巡る国際動向について約10年にわたる変遷を解説した。

 江間氏によれば、AIガバナンスに関する国際的な議論は2016年ごろから始まり、プライバシーやセキュリティ、バイアス、安全性、誤情報などの課題に対し、AI開発企業における公平性・安全性・透明性・アカウンタビリティが重視されてきたという。2018年ごろには主要国首脳会議(G7)や経済協力開発機構(OECD)などで国際的な原則が固まりはじめ、企業が自主規制的にAIリスクへの対応を行っていこうという動きがあったとしている。しかし、2020年ごろにEUが「AI法」というハードロー(罰則をともなう正式な法規制)での規制を提案。以降、法的規制を重視する欧州と、問題が生じてから対応する米国、品質保証や標準を重視する中国など、国・地域で異なるアプローチが生じたことを説明した。

 このような状況下、2023年に行われた広島サミットでは「相互運用性(インターオペラビリティ)」という概念が提案され、「各国・地域のガイドライン間の透明性を確保し、一定の基準でお互いを評価できるようにする」という方向性が示された。現在はOECDが事務局となり、大規模言語モデル開発企業などにレポーティングを求める取り組みを行っているという。

 江間氏は「AIに関して、日本は2016年ごろから国際的なルールメイキングに関わってきました。これは画期的なことです」と語る。さらに「AIは常に進化するため、日本はルールメイカー側に回れる。日本からEUの専門委員会に意見を届けることもできる。受け身ではなく『こうして欲しい』『これは嫌だ』という声を出すことで、実際にルールを変えていけるのです」と強調した。

東京大学国際高等研究所東京カレッジ 准教授/一般社団法人 日本ディープラーニング協会 理事 江間有沙氏

 江間氏の解説を受け、ABEJA 代表取締役社長CEO 岡田陽介氏は「経済産業省のAI事業者ガイドラインは、当初は『ビッグテックの日本支社ですら守れない』レベルでしたが、事業者側からの意見発信によって大きく修正されました」と実例を示しながら、「今回のような場で発信すれば、それが反映され変わっていくことは日常的に起きるでしょう」と述べた。

 一方で松尾氏は、国際的なルールメイキングの場に参加する日本人の少なさを指摘。「どの会議に参加しても日本人は数人しかおらず、その参加者も大体同じ顔ぶれ。議論の場において、特に影響力を持つ数人の日本人による発言しか海外には届いていないのだということを痛感します」と現状を憂慮し、「AIガバナンスやAI政策に知見を持つ方や興味のある方には国際的な議論に加わっていただき、日本からもっと発信していくことで、国際的な場所で真剣に議論を進めていければと考えています」と訴えた。

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...

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