2025年6月23日、ガートナージャパン(以下、Gartner)は、国内企業のIT調達の取り組みに関する調査結果を発表した。
同社は、2025年2月に国内企業のITリーダーを対象に実施したIT調達の取り組みに関する調査で、6項目の主要なIT調達業務に対する現在の重要度と満足度を調査(リードタイム[スピード]、IT製品・サービスに対する見識・目利き、価格[支出]の抑制、ITベンダーに対する交渉力、調達リスクの回避、ユーザーニーズの理解)。その結果、回答者の77%が、IT調達の取り組みに対して「非常に重要である」または「ある程度重要である」と回答している一方で、自身の調達活動に対する満足度は43%の回答にとどまった。

IT調達業務を実施するための付加価値別の重要度
出典:Gartner(2025年6月)

現在のIT調達業務に対する満足度
出典:Gartner(2025年6月)
一方、IT調達業務に関して組織的にどのように取り組むべきかを尋ねた質問では、「IT組織へ集中化すべき」(43%)「事業部門へ分散化すべき」(28%)「集中と分散を併用すべき」(29%)の3つに回答がわかれた。今回の調査はITリーダーを対象としていることから、自身の責務とされる「集中」指向が最も多かったと推察できるものの、それでも「集中」への回答は半数を割り込んでおり、必ずしもIT組織がIT調達を担うべきと考えているわけではない現状が浮き彫りになったとしている。
人材不足以外にもDXへの取り組みが「集中」「分散」の指向の差を生む
Gartnerは、「集中」「分散」の指向の差は、人材不足のような受動的な要因以外に、積極的に「分散」を指向する能動的な要因もあるとみている。その1つに挙げられるのが、DXへの取り組みだという。同調査で、調達体制別のDXを主導する組織を尋ねたところ、総じて「IT組織へ集中化すべき」と回答している企業はIT組織が主導している割合が最も多く (49%)、反対に「事業部門へ分散化すべき」と回答している企業は非IT組織主導でDXへの取り組みを推進する傾向が強いと明らかになった。

調達体制別のDXを主導する組織に関するサーベイ結果
出典:Gartner(2025年6月)
今回の調査では、現在のIT調達体制に関係なく、IT組織は今後DXへの貢献に注力したいと考えていることも明らかになっているとのことだ。また、ITのソーシング・調達・ベンダー管理(SPVM)のリーダーは、DX推進に対するIT組織の役割に応じて、IT調達機能をデザインするために以下4つの取り組みが必要になるという。
- IT組織内のIT調達業務を棚卸しし、人材の充足度と調達業務の集中・分散の各メリット、デメリットとを勘案しながら、IT組織内で実施すべきIT調達業務の優先順位を付ける
- IT組織への調達業務の集中化にこだわらず、IT組織外のリソースの活用可能性を検討し、調達業務の分担・移譲の有効性を非IT組織と精査する
- IT調達業務を非IT組織に分散移譲する場合でも、調達に関する規範やプロセスのガイドライン、製品・サービスのセキュリティ基準などはIT組織主導で策定し、事業組織へ周知・徹底を図る
- 調達先の企業プロファイルや他社実績はもとより、過去の交渉における実績・経験・知見・反省などを組織横断的に共有し参照できるナレッジベースを構築し、価格などの交渉力の底上げを図る
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