『価値あるデータ活用を実現するデータ統合基盤』
インフォマティカ・ジャパン株式会社 マーケティングディレクター 山本哲也 氏
IT支出が激減する中で、企業は守りの投資へと傾く傾向が強い。その対象となるのは、1つは組織の統廃合に伴う「システム統合」、そしてもう1つはシステムの統合に不可欠となる「データの統合」である。こうした「守り」の施策により情報資産を活性化させることで、生き残りをかけた「攻め」への第一歩が踏み出せるというわけだ。どうすれば「データ統合基盤」が実現できるのか、インフォマティカ・ジャパン株式会社 マーケティングディレクターの山本哲也氏が講演を行った。 【関連URL】 ・インフォマティカ ナレッジセンター
生き残るための情報戦略は「攻め」の基盤となる「守り」への投資から
長引く経済不況により、先行きが不透明となった時代。それを反映するかのように、企業におけるIT支出が激減している。さらにその内訳を見てみると、新規投資が抑制され、定常経費も削減される中で、「守り」のためのコストの割合が増大しているという。
その背景には、不透明な時代における企業の切実なIT戦略が透けて見える、と山本氏は語る。つまり、コンプライアンスへの関心が高まることで統制強化が求められ、その一方でグローバル化により各国市場での管理を強化する必要が生じていること。そしてコスト削減や機会損失の最小化を図り、組織統合によってスケールメリットを得ようという、まさに「生き残りをかけた戦略」が展開されているというわけだ。
そうした企業の戦略において重要になるのが「データ」である。大規模多国籍企業のトップレベルの役員へのインタビューに基づく調査結果によると、企業データの潜在価値について高く評価しながらも(情報に価値がある:71%)、実際に自社システムにおける活用は十分とはしていない(利用できている:43%)。つまり、データを十分に活用できれば、企業にとって大きな推進力となることは誰もが承知しながらも、十分な対応ができていないというのが現状のようである。
実現へのネックとなっているのが、社内データの統合の困難さである。データの問題として、不完全であったり、信頼性が欠如していたり、そもそも社内にバラバラに存在しているデータを1つの基盤のもとに統合するのは容易なことではない。さらにデータ構造はもちろん、システムそのものが複雑化しており、変化対応への困難さが高まるばかりだ。結果として場当たり的なデータ統合を乱立させ、十分にデータを活かすことができないでいるというわけだ。また、メンテナンスのためのコストが増大し、IT投資を逼迫させる結果になっており、結果7割もの予算が「現状維持」のために使われているという。山本氏は「その場しのぎではなく、全体コストを見定め、次の“攻め”の足がかりとなる“守り”の投資をすべき」と力説する。しかし、いったいどのようにすれば、実現するのだろうか。

データ統合プラットフォームの実現で、しなやかで強い組織へ
インフォマティカのデータ統合は、散在する様々なエンタープライズシステムデータへアクセスし、プロファイリングを行い、単一のデータ統合プラットフォームに併せてクレンジングを行なった後、統合、そして適切な場所へ配賦されるものである。このとき、将来的にクラウドやBtoBなどによる外部のデータとの統合を意識しながら、単一プラットフォームへの段階的な社内システムのデータ統合を行っていくことが必要だ。また、その後新たなシステムを外部に設けたとしても、データのシームレスな連携が可能なため、コスト削減はもちろんのこと、時間も大きく削減できるだろう。
こうして実現した単一プラットフォーム上では、データ統合に必要なあらゆる機能を一貫して保有し、データの標準化、部品化、再利用が可能になる。それは、将来に渡って運用・保守負担を軽減することを目的としたものだ。そして、データとしてリアルタイム性を高め、変更差分やバッチを自動的に反映させていくことができるため、常に信頼性の高いデータを保持できるようになる。また、メタデータによって複数のシステムにまたがるデータの属性やデータとの連携状況を可視化することで、複雑化したシステムを把握し、段階的なデータ統合へとスムーズな移行を担保する。
データの統合は重要としながらも、日々の業務の中でシステムを停止して統合作業を行うのは現実的ではない。しかし、こうした段階的な統合を図り、さらには日々投入されるデータのクレンジングを日常的な作業に組み込むことで常に正確なデータ品質を保ち、それぞれの場面でのデータ活用に大きな効力を生み出す。
山本氏は米国で既にデータ統合を活用した先行事例を多数示し、そのトータルコスト削減への効果を力説する。 しかし、実際にデータ統合プラットフォームが真価を発揮するためには、単にシステムとしての改善だけでは十分とはいえない。データがどういう価値をもち、どのようなビジネスプロセスにどのように使われているのかを知り、戦略的なデータ活用を考える「データの専門家」が必要だ。インフォマティカ米国本社ではこうしたデータ統合プラットフォームの実現だけでなく、データそのもの整理や活用についてまでアドバイスを行ない、仕組みとデータの両面から、企業のデータ統合基盤実現をサポートしているという。
山本氏は、これまでのデータ運用の歴史を振り返り、90年代のシステムごとのデータマネジメントから、2000年代には統合の重要性に気づき、統合アプリケーションが多数投入され、2010年代にはデータの統合基盤を共通化しながらも、できるだけコストを抑え、データをリユースしながら有効活用をしていく時代になるだろうと予測する。
また、従来型エンタープライズにおけるデータ統合だけでなく、クラウドとの連携が大きな潮流となりつつある。しかし、その流れの中で、新しい仕組みを導入しながらも、蓄積したデータをどのように活かしていくかが大きな鍵であり、併行して取り組んでいくことが重要になると語った。
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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
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