SI産業構造の変革、IT部門に求められる新たなスキルセットとは
中長期的には、Devinのようないわゆる「AI駆動開発ツール」が広く普及することによって、SI業界全体の構造が大きく変わる可能性もあるだろう。
従来のSIビジネスでは、企画や要件定義といった上流工程を請け負う一次請け企業から、詳細設計やプログラミング、テストといった下流工程を請け負う二次、三次請け企業へと仕事が降りていく強固な“下請け構造”が存在していた。しかし、DevinのようなAI駆動開発ツールが下流工程の作業を担うようになれば、「設計書をもらい、ただプログラミングコードを書くだけの下請け的な役割は、将来的には消滅するのではないか」と桜井氏は予想する。

このような変化の中では、システム開発を発注する事業会社のIT部門に求められるスキルや役割も大きく変わってくる。これまで多くの企業では、外部ベンダーにシステムの大まかな要件を伝えて、それ以降の開発作業を任せきりにするケースが多かった。しかし、ベンダーに代わってAI駆動開発ツールに開発作業を依頼できるようになれば、AIが正しく理解できるようにビジネス側の要求をより深く理解し、それらをシステム要件に正確に落とし込むスキルが求められるようになる。
また、これまでは成果物の品質は外部ベンダーが担保してくれていたが、AIに開発を依頼する場合には、成果物の品質をユーザー自身が評価しなければならない。そのため企業のIT部門には、AIが生成した成果物がビジネス要件をきちんと満たしているかどうか、正しく評価・判断できる能力がシビアに求められるようになる。
ただしその場合でも、プログラミングコードをゼロから書けるスキルが必ずしも必須になるとは限らないと桜井氏は述べる。
「かつては、他人が書いたソースコードをレビューするためには自身でもコードを書ける必要があると言われてきましたが、今後DevinのようなAI駆動開発ツールが広く普及することで、『自分ではコードを書けないが、AIが書いたコードを読むことはできる』というスキルを持つ若いエンジニアが増えてくると思います。要はAIが書いたコードが要件と合致しているかどうかを評価・判断できればいいわけですから、今後はコーディングスキルよりもレビュースキルが重視されるようになってくるでしょう」
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吉村 哲樹(ヨシムラ テツキ)
早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。その後、外資系ソフトウェアベンダーでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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