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“レジェンドCIO”5人衆と旅先で考える「これからの情シス」──2030年までに解決しておきたい課題

#6:CIO旅 in 沖縄

基幹システム、データ、AI活用……2030年に残したくない課題とは?

──2030年の企業ITはどうなっていると思いますか?

喜多羅:この1、2年のAIの進化を考えたら、5年後は今以上に優勝劣敗がついていると思います。AIを徹底活用できる会社とそうではない会社との差は、もうかなり広がっているでしょうね。生成AIにコードを書いてもらってどんどんリリースしている会社もあれば、「なぜ俺はいまだに自分でコードを書いてるの? よそは生成AIでラクに楽しくやってるのに、こんなところ居られへんわ」と人が辞めていく会社も出てくるでしょう。

画像を説明するテキストなくても可
喜多羅株式会社 Chief Evangelist 喜多羅滋夫氏

──2030年までにやっておきたいことは何ですか?

友岡:生成AIが出てきて嬉しかったのは、散在していたデータや正規化されてない情報が格段に扱いやすくなったこと。一方で、多くの企業では、基幹システムのデータベースにAIがアクセスできる仕組みがまだ整っていない。きちんと整理された重要データが生かしきれない。これが最大の危機です。

 だから、遅くとも2030年までにはすべてAPIで呼び出せる状態にしておきたい。要は、生成AIがエージェントとなって、基幹システムと対話できる状態にしておくということです。たとえば、生成AIが「この商品の在庫は今いくつ?」と聞くと、基幹システムが答える。「今発注したら、いつ届く?」と聞くと、また答える。生成AIと基幹システムが対話して発注まで完了する。ここまでできる状態にしておきたいです。

長谷川:そもそも、なぜ基幹システムの更新に5年も10年もかかるのか。仕様がよく分からないからですよね。だからソースコードを読んで、ドキュメントを作って、「ここは改善しなきゃいけないから、そのままリプレイスじゃダメだよね」と延々と議論する。

 でもこれからは、AIがリバースエンジニアリングしてくれる。人間の意見も入れながら、モジュール単位で、スコーンっと入れ替える。何度作り直したところで、そんなにコストはかからない。案外うまくいくんじゃないかな。

 それと、私がコープさっぽろで試していて思うのが、情シス以外の人のほうが無邪気にAIを使って結果を出していること。GoogleやOpenAIも、情シス抜きで成立するようにビジネスを考えている。こっちのほうが断然マーケットが大きいからね。

林:生成AIを使ってCEOが自ら何でもできてしまう時代が来て、CIOもCFOもCMOも要らなくなるかもしれない。そうなったら、我々はどうしますか?

友岡:AIが発達すると、仕事は大きく3パターンに分かれます。1つ目は、戦略。なぜこれをやるのか、何を実現したいのか、問いを立てる仕事。これにはやはりCIOが必要です。中でも重要なのが、自社のLLMに何を教えるかという判断だと思っています。特許情報を教えるのか、過去の失敗事例を教えるのか。ここに、CIOの個性がにじみ出る。

 2つ目は、オペレーション。ここはAIが多くを担うであろう領域です。3つ目は、現場への落とし込み。ここはAIだけでは完結できません。最後は組織と人が必要です。

林:我々世代は「ターミネーター」を観ているじゃないですか。人類の殲滅(せんめつ)を図るAI「スカイネット」の世界観に、少しずつ近づいている感じがしませんか。5年前はまだSFだと笑っていられたけれど、次の5年を考えると、「むっちゃ有り得るよね」と思うわけです。

喜多羅:どのタイミングでAIが意思決定を始めるのかは、非常に恐怖ではありますよね。しかも、これから間違いなく加速していく。ただ、こと企業のAI活用においては、新しいものを見たときに偏見なくフラットにそれに向き合えて、判断ができて、YES・NOを言えるかどうか。そういう健全な判断力を持ち続けることだと思います。

取材後記:○歳までにしたいこと

 沖縄へ行く直前、テレビドラマ『40までにしたい10のこと』に触発されて、私もやりたいことを10挙げてみようと試みた。ところが、「温泉に行きたい」以外に浮かばず、2日がかりで何とかひねり出したのが6つという始末。あの5人なら何を挙げるのだろうか。これを機に「60までにしたい10のこと」を問うてみた。

 「10個ってのが絶妙で、今の自分と向き合うのに良いお題」と言ってくれた林さんは、「トライアスロン復活。これは既にエントリーしたので、やらざるを得ない(笑)。アフリカに行く。マグロを釣る。孫と旅をする。バイクで九州を旅する。ダイビングでジンベエザメに会いに行く。小笠原諸島に行く。自転車で伊豆半島1周と淡路島1周。国内では茨城県と香川県だけ泊まったことがないので、それをクリアする。そして、流氷ダイブ」と一瞬で挙げ切った。

 「会社を創る。バイクで日本一周。そして、住んでいる街を元気にしたい」と虻川さん。

 2年前にダイビングをはじめ、既に250本潜っている長谷川さんは「ダイビングで世界中を旅するのが楽しみでしょうがない。60までにプロダイバーとして世界中の海に潜りたい」と意気込んでいた。

 5人のすごさは、バイタリティだ。思うだけじゃなく、必ず動く。温泉なんて明日にでも行けるじゃないか。何をもたもたしているのだ。

 ここまで読んでくださった皆さんも「○歳までにしたい10のこと」よかったらぜひ教えてください!

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この記事の著者

酒井 真弓(サカイ マユミ)

ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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