
2025年9月8日から4日間にわたり、Splunkの年次フラグシップイベント「.conf25」が開かれた。Ciscoによる買収がプロダクト戦略にどのような影響を及ぼしているのか。“AI時代”が到来する中、「マシンデータファブリック」「オブザーバビリティ」「セキュリティ」などを支える、統合プラットフォームとしての色合いを強めるSplunkの最新動向について、米国・ボストンよりレポートする。
Ciscoとのシナジー発揮へ 「.conf25」でデータ活用を再定義
Ciscoによる買収から約1年半、米国・ボストンにてSplunkの年次フラグシップイベント「.conf25」が幕を開けた。

世界中から多くの“Splunker”(Splunkのユーザー)が集った同イベントの基調講演には、Splunkのカマル・ハティ氏、Ciscoのジートゥ・パテル氏が登壇。Ciscoとの統合によって加速するSplunkの製品戦略と、AI時代における“新たなデータ戦略”が力強く語られた。
冒頭ハティ氏は、マイクロソフトに在籍していた頃から、Splunkコミュニティの熱量と多様性に驚嘆していたと述べると、「すべては素晴らしいコミュニティのおかげだ」と語る。その一方、CiscoとSplunkの統合に対するユーザーの期待と不安も聞こえてくるとして、「昨年私たちが皆さんに交わした約束を覚えているでしょうか。皆さんの願いは『シスコよ、頼むから(Splunkを)台無しにしないでくれ』というものだったが、私は『Splunkを“エピック”(最高のもの)にする』と宣言した」とパテル氏。「AI時代」が到来した今、単なるチャットボットによる生産性向上という波を超え、AIエージェントが仕事やタスクを自律的に実行する“新たなフェーズ”へと突入している中、CiscoとSplunkのソリューションによって、AIの導入を阻んでいる「3つの壁」を乗り越えるためサポートしていくと述べる。

今、多くの企業がAI活用を進める上で直面している課題は、「インフラの制約」「信頼の欠如」「データギャップ」の3つだろう。インフラの制約は、AIが必要とする電力やコンピュート、ネットワーク帯域などが不足しているという問題だ。特に24時間365日稼働するAIエージェントは、従来のスパイク状のリソース消費とは異なり、持続的かつ永続的にリソースを必要とするため、インフラへの負荷が増大しつづける。また、信頼の欠如とは、AIシステムの複雑性を指しており、シリコンからアプリケーションに至るまで、“AIスタック”全体の可視性を確保することが必要だとした。特にハルシネーションやプロンプトインジェクションのようなAIを取り巻く脅威に対して、「(想定外の動作などを防ぐための)『ガードレール』を設ける必要がある」とパテル氏は指摘する。
そしてデータギャップは、メトリクスやイベント、ログ、トレースなどの「マシンデータ」を用いたAIモデルのトレーニングが不足していることを意味しており、「AIにとってマシンデータは『不可欠な燃料』でありながら、未開拓の状態だった。このマシンデータによる“データギャップ”を埋めることこそが『AI時代のマシンデータプラットフォーム』を目指しているSplunkの使命だ」とパテル氏は強調した。

ここにこそCiscoとSplunkが統合を進める意義があるとして、データセンター向けの高性能ネットワーク、AIモデルの振る舞いを監視・制御するためのセキュリティ、そしてスタック全体のオブザーバビリティなど、CiscoのプラットフォームとSplunkが融合することで、「AI時代に欠かせない、インフラ基盤を担っていく」とパテル氏は力強く宣言した。

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岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)
1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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