SEOからGEOへ 「総力戦」に変わるWebサイトの運営
先述した現状を踏まえ、企業に必要になるのは「GEO(Generative Engine Optimization)」の視点である。「アドビでは、GEOを『SEOを拡張した』概念と捉えている」と平嶋氏は述べ、これまで以上に組織のチーム間コラボレーションが重要になるとした。Webサイトやアプリ制作、広告キャンペーンを外部に委託することの多い日本企業では、SEO全盛期から社内外の協力体制の確立が重要だった。GEOに本格的に取り組むのであれば、社外のパートナーを含めたより強力な体制の整備が求められる。たとえば、広報との関係強化も一つだろう。というのも、Webサイトのコンテンツだけではなく、外部の“権威性の高い”メディアに掲載されたコンテンツの影響力が大きくなるためだ。
「GEO対策は業種を問わず、重要なテーマと認識されている。既に顧客の中には自社へのトラフィック流入に影響が出ているところも出てきた。CMO(Chief Marketing Officer)や事業責任者にとっての経営課題として対策は急務である」と、顧客との対話機会の多い平嶋氏は述べ、経営幹部によるリーダーシップの必要性を訴えた。正しいやり方でAIへの影響力を高める。そのために必要になるのが、図1で見たトラフィックの可視化が可能なツール「Adobe LLM Optimizer」(図2)である。

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同製品は、以下4種類のデータ収集に焦点を当てている。
- LLM入力データ:生成AIツールにユーザーが入力したプロンプトの内容
- LLM出力データ:生成AIツールが出力した結果
- エージェンティックデータ:AIエージェントがクローリングしたサイトに関するデータ
- リファラルデータ:Webサイトへの流入につながるリンク
最初の2つのデータは、LLMへのアクセスに依存するため、直接的な収集は難しい。そこでプロキシサーバーから取得される。さらに今後AIエージェントの導入が進むと、LLMに入力データを与えるのは人間でも、出力のためのデータを与えるのはAIエージェントという役割分担に変わっていく。そのためのエージェンティックデータは、CDN(Content Distribution Network)のログファイルから取得する。Adobe LLM Optimizerでは、コンテンツ管理システムにAdobe Experience Managerを利用している場合、CDNのログデータに直接アクセス可能だ。最後のリファラルデータはLLM由来のタグを追加する必要があるものの、4種類のデータへのアクセス手段が確保されている。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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