2025年10月2日、Gartnerは、ITアプリケーションリーダーのうち、現在、完全自律型AIエージェント(人間の監督を必要としない、目標主導型のAIツール)の検討、試験運用、導入を行っていると回答したのは15%であるとの調査結果を発表した。
同社は2025年5月〜6月に、北米、欧州、アジア太平洋地域においてフルタイム従業員が250名以上在籍する組織のITアプリケーションリーダー360名を対象に、生成AIおよびエージェント型AIが企業アプリケーションに与える影響を調査した。
完全自律型ソリューションの導入障壁としては、「ベンダーが提供するセキュリティ、ガバナンス、ハルシネーション防止策が十分でないのでは」という信頼の欠如と、組織がそうしたソリューションを受け入れる準備が整っていないという懸念が挙げられるという。ベンダーのハルシネーション防止能力を高く、または完全に信頼している回答者は19%だった。一方で、回答者の74%はAIエージェントが新たな攻撃経路になると考えており、適切なガバナンス体制が整っていると強く同意したのは13%だった。
AIエージェントの影響は大きいが、必ずしも変革的とは限らない
回答者の26%は、AIエージェントが生産性に変革的な影響をもたらすと感じている一方、過半数(53%)は「影響は大きいが変革的とは限らない」と回答し、20%は生産性向上の効果は限定的である」と回答している。

AIエージェントによる生産性への期待値
出典:Gartner(2025年9月)[クリックすると拡大します]
調査では、IT部門、ビジネスユーザー、経営層の間でAIがどのような課題を解決するかについて合意が取れていると強く同意した回答者は14%だった。この三者に合意形成ができている組織は、AIエージェントが変革的であると答える割合が1.6倍高く、生成AIツールに大きな価値を見出す割合は3倍以上だったという。
AIエージェントの導入領域を誤っている可能性も
AIが解決できるビジネス課題について共通理解を持たない組織は、AIエージェントが最も効果を発揮する領域として、オフィスツールを使った業務の生産性を挙げる傾向が約2倍高くなっているとのことだ。一方、合意形成がある組織は、カスタマーサービス、ERP、営業など、より専門的なユースケースに注力する傾向があるという。
AIエージェントは当面、アプリケーションや従業員を代替しない見通し
AIエージェントの長期的な導入については不透明だが、ほとんどのリーダーは今後2〜4年以内にアプリケーションや従業員がAIエージェントに代替されるとは考えていない。アプリケーションを代替すると強く同意したのは12%、従業員を代替すると強く同意したのは7%だった。
一方で「やや同意」とした割合は高く、34%がアプリケーション、29%が従業員を今後2〜4年でAIエージェントが代替すると考えていると回答している。
Gartnerのアナリストは、エージェント型AI導入に向けて以下3つの重点領域に注力することを推奨している。
- AIエージェントのガバナンス:プラットフォームに依存しないAIエージェントガバナンスフレームワークを策定し、エージェントの乱立リスクを低減する。明確なガイドライン、ポリシー、管理体制を整備し、様々なツールや領域で安全にエージェント能力を開発できるようにする
- 影響が大きい領域へのAIエージェント適用:AIエージェントが解決できる課題についてIT部門とビジネス部門の合意形成を図る。たとえば、オフィスツールでの生産性向上の取り組みが、リスクが多く効果が薄ければ、カスタマーサービスやデータアナリティクスなど、よりROIが明確な領域への適用を検討する。適切なユースケースへの適用は、テクノロジーへの信頼醸成と効果の最大化につながる
- AIエージェントのマルチベンダー戦略採用:同社は、現時点で単一ベンダーのみを採用するのは時期尚早と考えている。ERP、CRM、デジタル・ワークプレースなど複数のベンダーを併用しながら評価し、今後も進化する要件に対応できる能力を持つベンダーを選定すべき
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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
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