規制対応を競争力に変える、200社と共創した業界特化型クラウド基盤
──IBM Cloudは他のクラウドプロバイダーとどのように差別化しているのでしょうか?
バドラニー氏:私たちは業界ごとに最適化されたクラウド基盤を提供する戦略を採用している点が特徴です。約200社の銀行、金融サービス、ヘルスケア、政府機関のクライアントと協業してきましたが、クラウド導入を妨げるのは技術的な能力ではなく、セキュリティ、コンプライアンス、リスク、規制対応といった要素です。単に強力なクラウドプラットフォームを提供するだけでなく、コントロールフレームワークを構築し、技術的統制を実装し、プロセス統制を自動化することに注力しました。
マギー氏:私たちのハイブリッド戦略は、まだクラウドに移行していないすべてのワークロードが、何らかのクラウド運用モデルに移行できるようにすることを目指しています。顧客のワークロードの大半は、まだクラウドに移行していません。そして最もミッションクリティカルなワークロードは、どこにも移行していませんでした。必要な規制対応、セキュリティとコンプライアンスの特性、回復力と信頼性の特性を追求したのです。
エージェント型AIが運用を変革、Watsonxとマルチベンダー戦略の実力
──IBMのAI戦略、特にWatsonxについて伺います。エンタープライズ向けAIプラットフォームとしての差別化ポイントは何でしょうか?
バドラニー氏:Red Hatやオープンソースへの投資が、Watsonxをエンタープライズプラットフォームとして支えています。オープンソース分野では、LangChainやLangFlowといったコミュニティに多額の投資を行っています。Watsonxでは、AIのためのモデルとツール、そしてデータに注力しています。また、ガバナンスについても大きな進展があります。最も革新的なのはAgentic AI、つまりエージェント型AIです。クラウド上には多くのパートナーがAgenticツールを構築しており、IBMは自社でこれらの機能を人事プロセス、法務プロセス、開発者の生産性向上に使用しています。
過去12ヵ月間、NVIDIAとの強力なパートナーシップのもと、多くのトレーニングクラスターを運用してきました。約4週間前にはAMDとのトレーニングクラスター提供を発表し、さらにIntelのGaudiアクセラレーターも提供しています。Intel Gaudi 3の価値は「コストパフォーマンス」です。私たちは、AMD、Intel、NVIDIAのすべてのAIアクセラレーターを提供する唯一のクラウドです。
マギー氏:今後もAI分野では膨大な発表がありますが、特にAgentic AIが多くの新しいイノベーションの中心になると考えています。
──最後に、日本のIT部門のリーダーへのメッセージをお願いします。
バドラニー氏:エンタープライズソフトウェア開発は大きな変革期を迎えています。今後数年間で、SaaS型モデルの大幅な加速が見られるでしょう。そして、ハイブリッド・バイ・デザインという考え方が、企業のデジタルトランスフォーメーションを成功に導く鍵になると確信しています。
マギー氏:AI、特にAgentic AIの進化は速く、今後も多くの発表が続きます。重要なのは、これらの技術を戦略的に、そして組織全体で一貫性を持って活用することです。IBM Cloudは、エンタープライズ企業が安全かつ効率的にこの変革を遂げられるよう、引き続き支援していきます。
この記事は参考になりましたか?
- EnterpriseZine Press連載記事一覧
-
- 「ハイブリッド・バイ・デザイン」とは何か?──IBMが示すAI・マルチクラウド戦略
- 金融機関は紙・Excel文化から脱却できるか? 地銀や信金も「データ活用」「内製化」に注視
- 経理部門からCFO組織へ:DNPが挑む三位一体の変革戦略と30%業務効率化
- この記事の著者
-
京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
