これまで8回にわたってHyper-V 2.0とVMware ESX 4.0を比較してきた本連載ですが、今回が最終回となります。最終回ではこれまでの比較項目を簡単に振り返りながら、それぞれの製品の将来性を考えてみます。
[比較13]: 将来性
本連載が始まってから半年以上経過し、すでに執筆時点から状況が変化してきている項目も現れてきました。そこで今回はまとめを兼ねてこれまでの連載内容を振り返りつつ、最新の動向やニュースなど将来像につながる情報をご紹介していきます。
将来像は仮想化を行う上で今すぐ影響を与えるものではありませんが、将来性があり市場認知度やシェアが高い製品ほど技術情報や関連ツールの発展・充実を期待できるため、中長期的に利用していくためには重要な指標の一つといえます。
なお本文には将来の製品・技術に関する予測が含まれています。執筆時点での最新状況にもとづいて記述していますが、将来的に機能や仕様が変更になる可能性があることをあらかじめご了承ください。
システム要件
第1回では、導入システム要件とサポートするゲストOSの一覧を比較しました。
ハードウェア
導入システム要件は、前バージョンで既に64bit化されていたHyper-Vがほとんど変わらなかった一方で、VMware ESXは本バージョンから64bitアーキテクチャーに一新され、32bit プロセッサーのサポートがなくなりました。これにより両者の導入システム要件はほぼ同じものになりました。
32bitから64bitへの切り替えに匹敵するような大幅なハードウェア・アーキテクチャー変更は、少なくとも今後数年間はないと考えられています。そのため仮想化製品のバージョンが上がっても、当面は導入システム要件が大きく変わってしまうことはないでしょう。
ただし仮想化を取り巻くハードウェア側の機能(Intel VTなど)は、今後も急速に改良が進む見込みです。そのため「導入システム要件(=最小要件)」がそのままであっても、ハードウェアの進化に応じて「推奨システム要件」は変化していくかもしれません。
ゲストOS
ゲストOSは従来からVMware ESXのほうが多くの種類をサポートしており、本バージョンでもサポート対象をさらに拡大させました。何世代も前のレガシーOSから最新OSまで幅広く対応しており、今後新しいOSが登場してもスムーズに対応するだろうという安心感があります。
一方リリース当初はサポート・ゲストOSの少なかったHyper-Vですが、2010年1月にLinux Integration Components(※)のアップデート版(Version 2.0)を公開するなど改善を図ってきており、現時点ではWindows OSに加えてSUSE/RedHatという2つの主要なLinuxディストリビューションを正式サポートしています。またLinux Integration Componentsは、オープンソースとして公開されているという特徴があります。そのため正式サポートの有無は別として、他のLinuxについてもHyper-V上で稼働させることが難しいものではなくなりつつあります。
Hyper-V上でLinuxゲストOSを快適に動作させるためのコンポーネント。Hyper-Vに対応した仮想NICドライバーなどが組み込まれており、ゲストOS(ネットワーク・アクセスやストレージ・アクセス)のパフォーマンス向上につながる機能を利用できるようになる。
ただし、Microsoftが正式サポート対象範囲を今後どこまで拡大させる方針なのかは明らかにされていません。よって、SUSE/RedHat以外のLinuxやUnix系OS(Solaris/FreeBSDなど)を動作させたいのであれば、VMware ESXのほうがよいでしょう。

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- この記事の著者
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前島 鷹賢(マエジマ タカマサ)
Microsoft MVP for Virtualization - Virtual Machine日本アイ・ビー・エム(株)に勤務。MicrosoftやVMware製品を中心としたx86インフラ環境の設計・構築に従事。特にWindowsサーバー/クライアント環境のシステム管理・監視、セキュリティ、サーバー仮想化などの分野...
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