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SAPの構造化データ専用モデル「SAP-RPT-1」登場 LLMが解けないビジネス課題を解決できるか

SAP Buildで「バイブコーディング」も可能に

“構造化データ”専用モデル「SAP-RPT-1」が登場

 データなしでは、AIは何も実現できない。BDCというデータ基盤の上に存在する「SAP AI Foundation」は、SAPのAI機能を拡張し、ビジネスプロセスやデータに深く根ざした「独自のAI」を構築することにも役立つ。

 SAPのフィリップ・ハーツィヒ氏(Chief Technology Officer, SAP)は、「市場には強力なモデルやツールは存在しているが、企業のビジネスユーザーが『本当にやりたいこと』を見逃している。それは予測を行い、より良い意思決定を行い、より良いビジネス成果を得ることだ」と指摘した。ここでの予測とは、たとえば配送や支払い遅延、顧客が離脱する可能性などが該当する。こうしたリスクや機会を事前に把握しておきたいと考えても、汎用的な大規模言語モデルだけでは難しい。また、ビジネスデータの多くは「文字」ではなく、表の中の「数字」として存在している。つまり、前述したユースケースに適しているのは、むしろ基本的な機械学習だ。とはいえ、「ナローAI(弱いAI)」のようなタスク特化型のAIを用いたアプローチは、コストの観点から現実的ではない。

 そこでSAPが選んだのは、新しい基盤モデル「SAP-RPT-1」を独自に開発することだった。同モデルの「RPT」(※読みは「ラピッド」)の意味として、RはRelational(表形式のデータに対応)、PはPre-trained(事前学習済み、追加トレーニングが不要)、TはTransformer(深層学習モデルTransformerベース)を表す。言語モデルが次の文字列を予測し、画像生成モデルが次のピクセルを予測するように、RPT-1は次に来るであろう「数字」を予測することに特化した“構造化データ”専用モデルである。それ故にRPT-1のユースケースは「ビジネスの将来」だ。

 ハーツィヒ氏によれば、RPT-1はスタンフォード大学とSAPの共同研究成果を含む2本の研究論文を基に開発されており、「RPT-1-small」「RPT-1-large」「RPT-1-OSS」の3つのバージョンがあるという。RPT-1-OSSは既にHugging Face上に公開されているが、RPT-1-smallとRPT-1-largeの2つは2025年度第4四半期の一般提供開始を予定している。気になるパフォーマンスについて、ハーツィヒ氏は「これまで数週間かかっていたような予測を数日に短縮し、将来のバージョンで数分にまで短縮できるようにしたい」と語っていた。実現すれば、企業はBDCのセマンティックデータから得られるインサイトとRPTを用いた予測を組み合わせることで、意思決定インテリジェンスを飛躍的に進化させられる。

図2:SAP-RPT-1の3つのバージョン(出典:SAP)
図2:SAP-RPT-1の3つのバージョン(出典:SAP)
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

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