150人のIT人材をどう動かす?三井不動産が「AIエージェント」と「交換留学」で狙う組織の化学反応
第41回:三井不動産 執行役員 DX本部長 宇都宮幹子さん
相互理解を促す事業部との“交換留学制度” 思わぬ効果も
酒井:2024年10月からは、人材育成の一環として「DXトレーニー制度」と「ビジネスインターン制度」を始めましたね。
宇都宮:限られたエキスパートだけでは、グループ全社の課題解決は難しかったんです。努力はしてきましたが、今ひとつ手応えがなかった。やはり不動産業はリアルのアセット価値が一番で、デジタルはあくまでブーストするための手段。デジタルの価値や制約をビジネス側が理解しないと、適切なIT投資にならず、私たちも動きにくいところがありました。
一時的な研修だけでは限界がある。そこで始めたのが「DXトレーニー制度」です。ビジネス人材にDX本部へ来てもらい、1年間専任で実務とともに学んでもらう。後半は元の部門の課題解決に取り組んで、戻ったらすぐ実行できる状態にしています。
酒井:徹底してますね。どんな成果が上がっていますか?
宇都宮:住宅分譲事業から来たトレーニーは、お客さまとの会話をAIで日報に自動記録する仕組みを作りました。それまで営業担当が手入力していたんですが、3割ほどしか入力されていなかった。彼は1年間で企画から現場検証まで、全部やり切りました。
もう1つは「ビジネスインターン制度」。DX本部のメンバーが他部門やグループ会社に半年間異動します。最初はDX本部の業務を50%残していましたが、それだと本業が優先されてしまう。今は100%インターン先に集中する形に変えました。
DXビジネス人材育成制度のプログラム概要
[クリックすると拡大します]
引用:三井不動産プレスリリース「新グループDX方針『DX VISION 2030』を策定 『リアル×デジタル』によるビジネス変革・イノベーションを推進、新DX人材育成制度を開始」(2024年8月5日)
こちらも良い成果が出ています。三井不動産リアルティに出向したメンバーは、営業未経験ながら商談で説明して、営業の先輩たちと協力しながら成約をいただいてきました。目を輝かせていましたね。
あるセキュリティのエキスパートは東京ミッドタウンの運営・管理をするマネジメント会社に半年間出向し、アートの展示会やクリスマスなど数多くのイベント運営に携わりました。「お客さまが喜んでくれて楽しかったけど、自分はセキュリティの仕事が好きなんだということも再確認しました」と言って帰ってきた。
酒井:新しい世界に目覚める人もいれば、原点に返って新たな気持ちで仕事をする人もいる。どちらも素敵ですね。

宇都宮:話を聞いてるだけじゃダメですね。営業が契約をいただくまでにどんな苦労があるのか、自分の仕事がお客さまにどう評価されるのかを身をもって体感する。この実感が、DXにも生かされると思っています。
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酒井 真弓(サカイ マユミ)
ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...
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