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「ユーザー側の態度」が破綻したITプロジェクトの予後を左右する──“野村HD vs 日本IBM”裁判の教訓

野村ホールディングス/日本アイ・ビー・エム 裁判考察:後編

傷口を広げないためにできること

 担当者の立場からすれば、プロジェクトの進捗が思わしくないこと、ましてその責任が自分たちにもあることを社内に報告し、ベンダーに対しても認めることは相当にハードルが高いかもしれません。とはいえ、それでは時期が過ぎれば過ぎるほど事態は深刻になるばかりです。

 ただ、このハードルをいくばくかでも下げる方法もあります。簡単にいえば、「プロジェクトの状況の可視化と共有」です。ユーザー側の担当者は、プロジェクトの進捗や課題、リスク、あるいは品質(欠陥)などの状況と、それについて双方が話し合った結果について、ベンダー側はもちろん、ユーザー側の責任者や、場合によっては経営層にもできるだけリアルタイムで報告しておくことです。プロジェクト管理ツールをベンダーと共有し、ユーザー側の責任者らも見れるようにしておくのも良いかもしれません。

 そうしておけば、ユーザー側もベンダー側も、プロジェクトで起こっていることを客観的かつリアルタイムに把握できるため認識の齟齬やズレは生まれません。また、ユーザー側の担当者が、プロジェクトの破綻が避けられなくなってから「実は……」と報告するような事態も未然に防げます。もしかしたら、責任者が経営層から事態の打開策を提案してもらえたり、支援してもらえたりするかもしれません。いずれにせよ、早期に何らかの手を打つことはできます。

 この際、大切なのはユーザー側の責任者や経営層の方の心構えでしょう。ITプロジェクトに慣れている組織の方なら重々お分かりかと思いますが、システム開発プロジェクトというのは、終始、何事もなく計画通りに進むことのほうが稀です。多くの場合、途中で進捗が遅れたり、様々なトラブルや困難に遭遇したりして、計画の見直しをしながらやっとのことで稼働までこぎつけるものです。

 ですから上司筋の皆様は、プロジェクトが困難に見舞われても、それだけでシステム担当者を責めたり犯人捜しをしたりせず、その時点での解決のためにシステム担当者を支援することがとても大切です。

 残念ながら、今回の事件ではこうした「悪いことほど早く伝える」という一つの鉄則が守られていなかったように思えます。ユーザー側としては、ベンダーだけを悪者にして上司に報告し、ベンダー側に無理を強いることは、やろうと思えばできてしまうかもしれません。しかしそんなことをすれば、自身とその組織がより大きく傷ついてしまうであろうという想像力が必要でしょう。

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この記事の著者

細川義洋(ホソカワヨシヒロ)

ITプロセスコンサルタント
経済産業省デジタル統括アドバイザー兼最高情報セキュリティアドバイザ
元東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員
筑波大学大学院修了(法学修士)日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステム...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://enterprisezine.jp/article/detail/23435 2026/01/29 09:00

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