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EnterpriseZine編集部が最旬ITトピックの深層に迫る。ここでしか読めない、エンタープライズITの最新トピックをお届けします。

『EnterpriseZine Press』

2025年夏号(EnterpriseZine Press 2025 Summer)特集「“老舗”の中小企業がDX推進できたワケ──有識者・実践者から学ぶトップリーダーの覚悟」

手強い“2025年の崖”を乗り越える:モダナイゼーション最前線

カギは「業務プロセス」の変革──AIエージェントが台頭してきた今、必要となるモダナイズの本質とは

日本企業を静かに、そして確実に蝕む「技術的負債」と「業務的負債」

AIエージェントは、今後のモダナイズの潮流にどんな影響を与えるのか

 これらに加え、企業は生成AIやAIエージェントの台頭という新たな潮流にも直面しています。これらの技術が実用化されることにともない、モダナイゼーションの重要性は一段と高まっているのです。なぜなら、AIの能力を引き出すためには、常に最新かつ統合性のとれたデータを整備するとともに、業務プロセスを標準化し一貫性を確保することが不可欠だからです。

 データが部門ごとにサイロ化し、プロセスが属人化したレガシー環境は、AI活用における最大の障壁となります。たとえば、顧客データが複数のシステムで分散管理され、表記揺れが多発している状況では、AIによる分析は精度を欠き、意思決定に資する結果を得ることが困難です。 

 「AIを活用して優良顧客の分析をしたい」と考えても、顧客マスタデータが営業部門のSFA、サポート部門の管理システム、経理システムなどで分散管理されている場合、分析の精度や効率は大幅に低下します。社名が全角/半角、支店名が部署名に含まれている/いないといった表記揺れが存在すれば、名寄せ(同一顧客の突合)すら困難です。このような不整合なデータをもとに得られるのは、無意味な分析結果に過ぎません。 

データ分散・表記揺れがAI活用を阻害する構造

[クリックすると拡大します]

 AIとの協働を前提に業務プロセスを見直すことで、AIは企業変革を進める大きな助けとなり得ます。たとえば営業活動においては、Web会議の議事録作成からタスク抽出、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)システムの入力までをAIで自動化することが可能です。これにより、人間は煩雑な作業から解放され、顧客への提案や戦略立案といった付加価値の高い業務に集中できます。

 これからのモダナイゼーションは、単なるシステム刷新ではありません。「人とAIが最適に協働できる業務基盤」を構築するプロセスそのものなのです。

 営業担当者による見積もり作成を例に挙げると、AIエージェントがCRMや過去の受注データを横断的に検索し、「今回の案件と類似する過去のA案件(受注)の見積もり構成と、B案件(失注、値引き率が原因)の情報を提示します。推奨する構成はXです」といった具体的な提案を行うことが可能になります。

AIエージェントによる見積もり作成支援フロー

[クリックすると拡大します]

 モダナイゼーションはIT部門だけの課題ではなく、全社的な経営戦略として位置づける必要があります。重要なのは、単一システムの置き換え(リプレース)では不十分であるという点です。システムと表裏一体である業務プロセスの最適化がともなわなければ、投資対効果は限定的となり、時には無駄に終わる可能性もあります。 

 ある中堅 企業がワークフローシステムをクラウドサービスへ刷新した際、現場の抵抗により旧来の紙のハンコリレーとまったく同じ承認フローをそのまま再現してしまいました。その結果、意思決定のスピードは改善されませんでした。本来行うべきは、「本当に役員承認が必要か」といった業務プロセスのあるべき姿の再定義です。IT部門と業務部門の垣根を越え、業務を再定義することこそが、本質的な変革につながるのです。

次のページ
具体事例:システムを 無理に 刷新しないアプローチ 

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この記事の著者

上原 勝也(ウエハラ カツヤ)

株式会社日立ソリューションズ ビジネスイノベーション事業部 クロスマーケット・サービス本部 新事業推進センタ センタ長。Salesforce、ServiceNowを中核としたデジタルエクスペリエンスプラットフォーム事業における新事業推進に従事。特にAIエージェントに注目し、ソリューション強化およびユ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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