カギは「業務プロセス」の変革──AIエージェントが台頭してきた今、必要となるモダナイズの本質とは
日本企業を静かに、そして確実に蝕む「技術的負債」と「業務的負債」
具体事例:システムを無理に刷新しないアプローチ
では、具体的に何から着手すべきでしょうか。本連載では多様なアプローチを取り上げていきますが、今回は日立ソリューションズ自身が実践し、成果を上げた取り組みを2つ簡単にご紹介します。
1つ目は、既存の基幹システムを無理に刷新せず、最新のSFAと「あえて切り離す」疎結合のアプローチです。具体的には、基幹システムはそのまま維持しながら、各システムのデータをデータレイクに集約し、BI(Business Intelligence)ツールで統合・可視化しました。これにより、部門間のデータサイロを解消して全社的なパイプライン管理を実現しています。既存資産を活かしつつ、業績見通しの精度向上や一部の部門での業績会議廃止といった業務変革を達成しました。
2つ目は、従業員の行動変容を促すアプローチです。かつて日立ソリューションズでは、全社的な依頼事項の増加により、従業員が自分宛ての依頼を探すことや管理側の督促業務が大きな負担になっていました。社内依頼は、各従業員が自分事として捉え、期限を守って自律的に対応することが重要です。たとえば、ランサムウェア対策においても、パッチ適用や注意喚起への対応は一人ひとりの意識にかかっています。この意識変革をシステム面から促すため、イントラサイトのトップページに「今やるべきこと」を付箋で表示する仕組みを導入したところ、期限内の平均回答率は67%から98.2%に向上しました。
このように、大規模なシステム刷新だけでなく、身近なノンコア業務の課題をITで解消し、全従業員の時間をコア業務に取り戻すこともまた、重要なモダナイゼーションの一つです。
本連載では、モダナイゼーションの複雑な全体像を4つのテーマに分解し、実践事例とともに処方箋を解き明かしていきます。第2回では、多くの企業が直面する「CRMが定着しない」という課題の本質に迫ります。営業報告や会議のあり方まで踏み込んだコア業務のモダナイズとは何か、その具体的なアプローチを解説します。
第3回は、人事・総務・IT部門から届く申請や依頼など、ノンコア業務の玄関口を再設計する方法を紹介します。さらに、第4回では「独自開発システムをどう活かすか」というテーマで、必要最小限の改修による延命と事業変化に対応するための大規模改修という2つの方向性を整理します。最終回では、労働人口減少時代を乗り切る切り札として、AIエージェントとの協働による「ハイブリッド型業務基盤」の全貌を考察していきます。
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上原 勝也(ウエハラ カツヤ)
株式会社日立ソリューションズ ビジネスイノベーション事業部 クロスマーケット・サービス本部 新事業推進センタ センタ長。Salesforce、ServiceNowを中核としたデジタルエクスペリエンスプラットフォーム事業における新事業推進に従事。特にAIエージェントに注目し、ソリューション強化およびユ...
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