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「フィジカルAIで日本の製造業が復活」は本当か?──福本勲氏が突きつける不都合な真実

シーメンス、中国、ドイツ──日本が学ぶべきこと

ハノーバーメッセ2025におけるシーメンスのロボットがロボットを製造する取り組みのショーケース(撮影:福本勲)

──海外の先進事例や、日本との違いについて教えてください。ハノーバーメッセなども視察されていますが、注目すべき企業や動きはどこでしょうか。

福本:ハノーバーメッセに数年足を運んでいて感じるのは、BtoBベンダーのAI活用の取り組みが急激に進んでいることです。また、私は参加していないのですが、2026年1月のCES基調講演で、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOの対談相手がシーメンスのローランド・ブッシュ社長だったことにも驚きました。BMWのような完成品メーカーではなく、なぜシーメンスなのか。彼らがAIと産業DXの最前線にいることの証左です。

 シーメンスがハノーバーメッセ2025で展示していたAIエージェント活用のショーケースでは、プロジェクトマネジメントを担う上位エージェントがいて、その下に工作機械や搬送機、ロボットなどの制御に特化したエージェントなどが配置されています。人間が「こういう新しいロボットを作ってほしい」と上位エージェントに伝えると、そのエージェントがレシピやオーダーを考え、下位の各専門エージェントに順次指示を出していく。

 また、社内に複数の業務があれば、各業務の専門知識を持つAIエージェントをそれぞれつくり、ある質問や課題に対する回答や対策を創出しなければいけないときに各々のAIエージェントに議論をさせることによって、より高度な結果や高品質な回答を返すといった、取り組みも出てきています。

 従来、人がやっていた仕事をAIが代替するような動きが出始めているわけです。

 さらに、テキストだけでなく動画や写真など多様なデータを組み合わせ、マルチコンテキストから結果を導く取り組みも2023年頃から見られるようになりました。過去のトラブル対応や改善事例が、テキストだけでなく動画や写真などで残っていても、生成AIがそれを横断的に検索して返してくれる。

 シーメンスやシュナイダーエレクトリックのような欧州の企業は、M&Aなどによってデジタルケイパビリティを獲得するような動きを進めてきましたが、こういったプレーヤーがAIエージェントの活用でも先行した取り組みを進めている点は注目だと思います。

 中国については、「ゼロから作らない」戦略が上手い。中国はスマートマニュファクチャリング・システムアーキテクチャを2025年に発表していますが、これはドイツのインダストリー4.0のリファレンス・アーキテクチャを参考にしたことが推察されます。このように先行した取り組みを徹底的に活用し、スピード感を持って進めています。一方、日本は既存のフレームワークがあっても、ゼロから自分たちで考えようとする傾向がある。また欧米や中国はソフトウェアとハードウェアの分離、抽象化が非常に上手く、「一社で全部やる」という垂直統合思考の日本とは対照的です。

 ドイツで衝撃を受けたこととして、ミュンヘン工科大で講演をしたときに、ある企業のバイスプレジデント級の方にお会いしたことがあります。その方は、すでにMBAを持ちながら大学院の博士課程に通っていました。理由を聞くと、「今や、エンジニアリングのないマネジメントはないし、マネジメントのないエンジニアリングもない」とおっしゃっていました。たとえば、新しいテクノロジーが導入されたときに、ビジネスモデルはどう変わるべきか、さらには企業組織をどう再設計すべきかといった研究をしている方もいるとのことでした。帰国後、日本の大学関係者に「このテーマで博士号は取れますか」と聞いたら、工学部でもMBAでも難しいという答えでした。日本は文系・理系という分け方に縛られすぎています。エンジニアリングがわかる人が経営も学び、経営者にもテクノロジーの素養が求められる。そういうハイブリッドな人材がこれからは必要になるのではないでしょうか。

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日本企業の「DX停滞」を突破する実践的処方箋

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この記事の著者

京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...

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