Fortinetが「SSL-VPN」サポート終了を決断した真意──日本企業のVPN脱却を促せるか?
2026年5月の技術サポート終了まであとわずか……中堅・中小企業にも迫るゼロトラスト移行の要請
中堅・中小企業でもVPN脱却の流れは進むだろうか?
ここまでを踏まえてVPNからの脱却を急ぐべきというのは分かったが、問題はこの潮流を日本全体に広げていけるかどうかだ。フォーティネットの場合、SSL-VPNはFortiGateユーザーであれば無料で利用できたが、ZTNAへ移行するとなるとライセンス料が発生することになる。移行にそれなりの手間もかかるだろう。コストやリソース面で躊躇する、あるいは後回しにしようとするSMB(中堅・中小企業)も少なくないのではないだろうか。
この点については、今井氏も「コストや移行の手間がある程度発生することは間違いない」としたうえで、フォーティネットとしては、そうした企業にはまず移行の手間がそれほどかからないIPsecへと切り替えてもらい、徐々にZTNAへと移行していくアプローチを薦めていると説明した。また、VPNの機能とZTNAの機能は並行して使えるため、それなりの移行期間を設けることも可能だという。
同社は現在、既存のVPNユーザーに対し自社のZTNAやSASEへの段階的な移行を促進しているが、ユーザー離れを起こさずにゼロトラスト製品のシェアを拡大していけるだろうか。他社のVPN製品に比べ、導入の手軽さからSMBのユーザーを非常に多く抱えている点もフォーティネットの特徴だ。
実際、同社内でSSL-VPN終了の議論が浮上した際には、フォーティネット製品からのユーザー離れを懸念する声も上がったようだ。しかし、業界大手のベンダーゆえに背負っている社会的責任と、ユーザーの将来的な安全の確保を優先したほうが総合的なメリットが大きいという判断に至ったという。
VPNの脆弱性に対する世間からの認識や、他のセキュリティベンダーの動きにも左右されるだろう。アサヒやアスクルのランサムウェア攻撃被害が大々的に報道されたことで、IT業界やIT部門の人々以外にも、VPNの脆弱性に対する認知はそれなりに広がってきている。また、こうした被害事例は2026年も国内外で発生すると思われ、それによって他のベンダーもVPNサービスを廃止する決断を下す可能性は大いにある。
加えて、米国のように、日本でもVPNからの脱却を促す動きが国や公的機関主導で加速していく可能性は非常に高い。サポート終了の2026年5月は間もなくやってくるが、ユーザー側の判断に注目してみよう。併せて、フォーティネットが下した早期の決断が様々な意味で功を奏するかどうか、数年先に当時を振り返り、セキュリティの転換点として評価される日が来るかもしれない。
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名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)
サイバーセキュリティとAI(人工知能)関連を中心に、国内外の最新技術やルールメイキング動向を取材しているほか、DX推進や、企業財務・IRなどのコーポレート領域でも情報を発信。武蔵大学 経済学部 経済学科 卒業。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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