「今こそ経理が輝くチャンス」野村不動産HD 今川氏に訊く、社員への“強制力”で推進した経理DXの裏側
ガバナンス強化の視点から、強気の施策で業務プロセスを変革
経営層にはとにかく“粘り強く”/運用はあえて手作業を残して
新しいシステムの導入やルールの策定などを行うには、経営層への説得が必要不可欠となってくる。今川氏は、説得の際に「法的動向などとともに、定期的に経営層へ変革の重要性を伝え続けることを意識した」と語る。
そもそも、経理・財務の領域において経営層が最も関心をもっているのは予算や決算、株価や調達コストといった経営課題であり、出納業務などは関心の外であることも多い。そのため、たとえ現場が課題感をもっていたとしても、経営層に目を向けてもらえるチャンスが少ないのだ。だからこそ、粘り強く前々からシステム導入の必要性やプロジェクトの進捗を細かく説明し、経営層に問題を認識してもらうところから始めたという。
そのうえで、「費用対効果をどう示すかという問題には苦労した」と今川氏は当時を振り返る。高額なシステムを導入し、その金額以上の効果が出せるのか、定量的な数値を明示するよう経営層から伝えられ、その数値をどのように算出すべきかが、大きな障壁のひとつになった。
実際に経営層に説得をする際は、システム導入によって経理担当者何人分の工数が削減できるかといった視点はもちろん、ペーパーレス化によって働き方がどのように変化していくかといった企業全体からの視点でもアプローチを行ったという。システム導入の効果が“人減らし”につながるのではなく、企業そのものの発展につながるという伝え方だ。
また、システムの運用にあたっては、グループ会社との連携も重要な要素のひとつである。野村不動産HDは50社以上の関連子会社をもつが、すべての会社で統一のシステムを利用できているわけではない。たとえば、主要グループ5社では会計システムをSAPで統一しているが、小規模な関連会社などはバラバラのシステムを利用している状態だ。
「まだ完全に横串で会計システムを連携できていない」と現状課題を見せつつも、各システムの運用にはあえて手作業の要素を残すことで、効率化につなげていると今川氏は説明する。たとえば、請求書処理に活用しているBill Oneは、SAPと連携させていない。
請求書の取り込みは手動となるが、これにより前提の会計システムが異なっている会社でも、Bill Oneを展開することができている。すべての経理業務を連携し自動化するとなると、小さなグループ会社にはコストを負担できる力がないため実現が難しい。だからこそ、最初から100点を求めず必要な箇所を効率化させていく運用方法をとっているとのことだ。
そのほか、生成AIの活用も少しずつ進んできている。全社的に提供している生成AI「野村不動産GPT」やCopilotなどを利用し、資料のとりまとめやExcel業務の効率化などに役立てている。今後は、パッケージ化された生成AIサービスなどの導入も検討しているとした。
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