海外ベンダーが猛威をふるう中、「国産AI」に勝ち筋はあるのか?開発者×政府×弁護士が現状を徹底議論
日本企業がAI活用を成功させるために、変革すべきこととは
楠氏が語る政府のAI活用状況 各省庁で“内製”が進む
佐久間:続いて、楠さんから自己紹介をお願いできますでしょうか。
楠正憲氏(以下、敬称略):デジタル庁の楠です。私はマイナンバー周辺の政策をメインに担当しており、AIなどの新技術に関する政策も担当しています。最近ですと、2025年度末までに自治体システムをクラウド化し、データ形式を揃えるといった取り組みをしています。
元々はAI担当ではなかったんですが、約3年前に岸田総理とサム・アルトマン氏が話す機会があり、そのタイミングで政府内でも大きくAI戦略を転換することになりました。当時から、国産LLMを使うのか/海外のLLMを使うのかという議論は活発でした。あのときはOpenAI一強のような状況だったため、海外LLMに日本語データの性能を高くしてもらいたいという風潮が強かった。しかし、この3年で状況は変化していますよね。世界の競争状況を見てもOpenAI一強ではなく、AnthropicやGoogleも含めた三つ巴の戦いになっていますし、日本も大きくビハインドしていない。3年前と比べると、はるかに良い環境になっている実感があります。
そんな中、2025年12月23日にAI法に基づく「人工知能基本計画」が閣議決定され、その中に政府も徹底的にAIを活用していくという内容が記載されています。デジタル庁は、この“政府のAI活用”に責任をもつ立場になります。
政府内のAI活用で言うと、3年前は無料版のChatGPTを使っている人しかいませんでした。そのときから当庁では、東京工業大学(現、東京科学大学)らが開発したモデル「Swallow」などの国産LLMも使い始めていましたし、有料版のChatGPTを利用してもらうためにGPT-4を試してもらったり、Claudeなどの他モデルを使ってもらったりしました。
その後、デジタル庁では政府内のAI活用における使い勝手を良くするべく、2025年から先ほども紹介に預かった「源内」という内製モデルに切り替えました。源内は、職員が自発的にオープンソースのGUIなどでモデルを拡張したことをきっかけに、2025年頃から構築が始まっていったものです。
現在は「国会答弁検索」「要約文体指定」など、数十種類のアプリケーションが動いています。これらのアプリケーションの中には、ハッカソンなどで職員が民間とコラボしながら内製したものもあります。
特に人気の高いアプリは、翻訳や文字起こしなどができるものですね。また、そういった汎用的なAIアプリとは別に、「公用文チェッカーAI」など、行政実務用のAIアプリも揃えています。公用文チェッカーは、実は農林水産省の職員が作ったものをデジタル庁でも活用しています。こういったシチズンデベロッパーが各省庁にいるので、そういった方々が源内を積極的に活用してくれています。
現在、デジタル庁内ではダッシュボードで日々の利用状況をモニタリングをしているのですが、職員の過半数である1,247人が利用しています。細かな属性を見ると、現場に近い係員などは利用率が高いのですが、課長、室長、企画官などは利用率が低いです。幹部クラスの人たちにAIをいかに使ってもらうかが、課題のひとつになっています。
「幹部のほうが目が肥えているのだから、彼らが納得する高性能なAIを作るべき」という意見もあります。現在は、源内だけでなく外部アプリ・諸モデルも含めてクラウド基盤上で統合しており、基本的には職員全員がどのAIも使える環境を作ろうとしているところです。
佐久間:ありがとうございます。個人的には、シチズンデベロッパーの話が面白いなと思いました。「源内」という名前のモチーフは、平賀源内でしょうか。彼には発明家というイメージがあります。
楠:そうですね。発明家をたくさん増やしていきたいという気持ちで名づけたものなので、今後は他省庁も巻き込んだ施策を行っていきたいです。
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