Ai Workforceを300億円事業へ FDEによる「LayerXモデル」の確立を目指す
Ai Workforce事業を推進する上で、LayerXが重視するのが「FDE(Forward Deployed Engineer)」というモデルだ。これは米パランティア・テクノロジーズなどが採用している手法で、エンジニアが顧客現場に入り込みながら課題解決にあたるという方法である。シリコンバレーを中心にビッグテックやAIスタートアップ企業が採用したことで、日本でも少しずつ注目を集めているアプローチだ。一見すると従来的な“客先常駐”だが、SaaSのような課題解決型のプロダクトとは異なり、AIエージェントを用いたサービスでは個社ごとの課題を解消していくことが求められるため、(FDEでは)CTOに近い役割を担いながら伴走支援を行う。
このFDEを実現するためには、プロダクトにも高い柔軟性が求められる。実際、LayerXでは直近1年間で、コードの半分以上を新たなものに作り替えるなど、FDEが十分に活用できるようにするための試行錯誤をつづけている。
「プロダクトの柔軟性が低く、『ここまでしかできません』となってしまうようでは意味がありません。FDEがどのような提案をしても対応できるプロダクトであること、その柔軟性こそが重要なのです」(中村氏)
そして、新たにCROに就任した南氏は、FDEを機能させるための組織構築に加えて、パートナー戦略を担うことになる。LLMなどの基盤技術を提供する国内外の「テクノロジーパートナー」、パターン化された(貿易業務や会計業務などの)ユースケースを再販し、スケールさせるための「セールスパートナー」、そして顧客の経営課題に対してFDEとして開発・実装を支援する「デプロイメントパートナー」の3つを柱として、パートナー戦略を推進していく。
特にデプロイメントパートナーとの連携は、前述の通りAI特有の難しさがある。SIerが担ってきた「仕様書通りに作る」関係ではなく、顧客と伴走しながらアジャイルに価値を創出することが求められるからだ。
「AIがどのようなものかは頭で理解できますが、『本当に何がいいのか』は触れてみないとわかりません。お客様が体感しながら、よいと思ったものをブラッシュアップしていく。そうした新たな価値をもつビジネスに転換していかなければなりません」(南氏)
南氏のCRO就任、FDEの確立を急ぐ背景には、Ai Workforce事業単体で2030年までに300億円規模の売上高に到達するという野心的な目標がある。これは日本のSaaS市場規模と照らし合わせると、極めて高いハードルだ。
この目標達成に向けて、単にツールを売るだけでなく、FDEによる顧客支援と柔軟なプラットフォームを組み合わせ、企業の経営課題をダイレクトに解決するための手法、まさに「LayerXモデル」といえるような新たな体制確立を目指す。これはクラウドが日本に浸透していった際、日本企業にあった導入モデルが形成されたプロセスと重なる。同社による新たな挑戦は、AI時代の勝者となるための試金石となるはずだ。

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岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)
1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。
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