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ITシステムの著作権は「考えたユーザー」のもの?それとも「作ったベンダー」のもの?

著作権は「表現した人」のもの?

大阪地方裁判所 令和7年2月17日判決

 仮に画面レイアウトになんらかの創作性が認められるとしても、これを実際に創作したのは、ITベンダーであり、(中略)医師が著作権者となる余地はない。

(中略)

 著作権が法定の権利であることに照らし、本件覚書や被告の内部文書に、著作者を原告とする旨の記載があるとしても、前記判断は左右されない。

(中略)

 著作権法は、表現を保護するものであり、アイディアそのものを保護するものではなく、本件システムそれ自体は原告の思想又は感情を創作的に表現したものとはいえない(後略)

事件番号 令和5年(ワ)第11871号

 著作権は「アイディアを考えた人」ではなく、「実際に創作した人、表現した人」に帰属するということです。

 たとえが妥当か分かりませんが、推理小説において、ある人が密室殺人のトリックを考えて作家に教え、作家はそれを言語化したという場合、著作権は作家に帰属して、アイディアを出した人にはなんの権利も認められないということです。

 そして、もう一つ興味深いことは、両者の間で取り交わされた覚書の効果はあくまで“内部的”であり、公的には通用しないとした点です。裁判所は「著作権は法定の権利」であると述べています。よって、これを譲渡するには別途法の定めに従った手続き、つまり「著作権譲渡の契約」が必要であるという意味です。

 ただ、判決の中では「ベンダーと発注者の間で、著作権の帰属について契約で取り決めをしていれば……」とも述べられており、そこがきちんとしていれば問題なかったというのが裁判所の判断でもあります。医師側は、「覚書に著作者を原告とする旨の記載があった」と主張しましたが、裁判所はそれを認めませんでした。内部的な覚書では、法定の権利である著作権は左右されないということのようです。

著作権は“正式な契約”によってのみ譲渡される

 医師からすれば、「システムのアイデアはほとんど自分が出した。ベンダーは機械的にそれを言語化しただけで、そこには創意も工夫もないではないか」と言いたいところかもしれません。しかし判決は、著作権法が守るのはあくまで“表現されたもの”であり、そこに内包されたアイデアではないとしました。

 もっともソフトウェアの中には、「表現がありふれていて独創性もないことから著作権が認められない」ケースのほうが多いかもしれません。そんな中で、今回のシステムについては著作物と認められたわけですから、アイデアにはそれなりに独創性があったのでしょう。その分、医師の残念な気持ちも察することができます。

 とはいえ、著作権法がそうである以上、医師に著作権は認められません。大切なのは「正式な手続きに則って、著作権の帰属を第三者的にも明らかにできるようにする」ことでしょう。

 これはベンダー側もよく理解しておく必要があります。お金を貰うという弱い立場にあって、発注者が法の定めに従わず著作権を主張してきた場合、実際問題としては、その主張に従わざるを得ないと考えてしまうかもしれませんが、あくまで著作権は原始的には自分たち側にあることをしっかり自覚しておくべきかと思います。

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この記事の著者

細川義洋(ホソカワヨシヒロ)

ITプロセスコンサルタント
経済産業省デジタル統括アドバイザー兼最高情報セキュリティアドバイザ
元東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員
筑波大学大学院修了(法学修士)日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステム...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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