SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

  • Security Online
  • DB Online
  • 財務・会計Online
  • ニュース
  • 新着記事一覧
  • イベント

    IT Women Summit
    2026年5月26日(火)オンライン開催

    • コミュニティ型勉強会「情シス塾」

      コミュニティ型勉強会「情シス塾」

    • Next エンタープライズAI

      Next エンタープライズAI

    • 酒井真弓の『Enterprise IT Women』訪問記

      酒井真弓の『Enterprise IT Women』訪問記

    • 待ったなし!「新リース会計基準」対応への一手

      待ったなし!「新リース会計基準」対応への一手

    • IT部門から“組織変革”を~気鋭のトップランナーを訪ねる~

      IT部門から“組織変革”を~気鋭のトップランナーを訪ねる~

    • 2025年のトップランナー35人が見据える今と未来 年末特別インタビュー presented by EnterpriseZine

      2025年のトップランナー35人が見据える今と未来 年末特別インタビュー presented by EnterpriseZine

  • ブログ

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

最新イベントはこちら!

IT Women Summit

2026年5月26日(火)オンライン開催

EnterpriseZine(エンタープライズジン)

EnterpriseZine編集部が最旬ITトピックの深層に迫る。ここでしか読めない、エンタープライズITの最新トピックをお届けします。

『EnterpriseZine Press』

2026年冬号(EnterpriseZine Press 2026 Winter)特集「AI時代こそ『攻めの経理・攻めのCFO』に転じる」

EnterpriseZine Press

なぜAI活用は「ツールの配布」で終わるのか?ノーコード時代と同じ失敗を越える「越境学習」3つの効果

連載第4回

 2年間で4本のツールを導入しても、現場には浸透しなかった。あるメーカーの情シス担当者が壁を破ったのは、社外コミュニティで偶然始まった「夜な夜なの対話」だった。そして今、生成AIの全社展開でも同じ構図が繰り返されている。「使われない構造」はなぜ消えないのか。

【過去の連載】

4本のツールを導入しても、現場は変わらなかった

 便利なツールやAIを導入すれば、業務は変わる。多くの企業がそう信じて、導入に踏み切る。選定し、研修を行い、マニュアルを整え、やるべきことはやった。それでも現場には根づかない──そんな光景が、いま多くの組織で繰り返されている。私自身も、まさにこのパターンにはまっていた。

 3年間で複数のツールを導入した。定着したものもあった。しかし、うまくいかないケースが目についた。どれも導入までは順調なのに、現場に根づかないまま終わる。そのパターンが繰り返されていた。

 たとえばプロジェクト管理ツール。タスクの進捗や担当者が一覧で見え、抜け漏れや遅延にすぐ気づける。そんな触れ込みで導入を進めた。ところが3ヵ月後に現場を見に行くと、入力しているのは一部の担当者だけで、多くの人は従来どおりメールや口頭で仕事を回していた。ツールを見れば分かるはずの進捗を、結局また人に聞いて回っている。そんな状態が続いた。

 他のツールでも似たことが起きた。最初は使い出す。しかし、いつの間にか入力されなくなり、気づけば使用そのものが止まっている。情報は結局、メールや口頭、個人管理のファイルに散らばっていく。ツールを入れたはずなのに、仕事の進め方は元に戻っていた。

 ノーコード開発ツールも導入した。業務アプリを簡単に作れるという触れ込みだったが、実際に使っていたのは情シスの私だけだった。

 問題はツールでも、マニュアルでも、研修でもなかった。そもそも「DX=ツール導入」という前提そのものが落とし穴だった。しかし当時の私には、その正体が見えていなかった。

 情シスとして長年、ツールの選定やシステム構築を磨き続けてきた。技術的な導入作業は確かに得意領域だった。しかし、「導入したツールを現場に根づかせる」ことは、まったく別の問題だった。

 組織文化、人間の行動心理、変革のプロセス設計——今の情シスには、かつてなかったほど広い領域が求められるようになっている。しかし、日々のシステム運用に追われる中で、その変化に気づき、対応できている人は多くない。当時の私もまた、その一人だった。何が足りないのかすら分からないまま、時間だけが過ぎていった。

講座の「後」に残った者たちの雑談が、すべてを変えた

 きっかけは偶然だった。たまたまオンラインイベントを目にしたところ、身近なお弁当屋が、スマートフォンで注文・決済できる仕組みをつくり、学校や学童保育のランチを丸ごと変えていた。こんな世界があるのか——目にしたのは、単なるツール導入ではなかった。ビジネスや現場の在り方そのものが変わっていく姿だった。さらに、イベントの中で登壇者が「DXで重要なのはDではなく、X(変革)だ」と語っていた。その言葉に触れたことで、DXの本質がツール導入ではなく変革にあるのだと初めて気づいた。

 同時に、自社で起きている停滞にも別の見え方が生まれた。足りなかったのは、ツールそのものではなく、変革の進め方なのではないか。何か打開策があるかもしれない——そう思い、私は地域のDX学習コミュニティに飛び込んだ。

 そのコミュニティには、さまざまな業種のDX担当者やDXを自社で推進したいという経営者が集まっていた。製造業、サービス業、行政、スタートアップなど、普段なら交わることのない人たちが同じテーマで講座を受け話し合う。

 こうした行為は、経営学では「越境学習」と呼ばれる。自分の専門性や所属組織という居心地のよい「ホーム」を離れ、異なる文脈の「アウェイ」に飛び込むことで、新たな視点を得る学び方だ。私はまさに、アウェイに飛び込んだのだ。

 講座では、デジタルスキルからマインドセット、組織変革まで幅広いテーマが扱われた。それぞれに学びはあった。だが、点が増えるばかりで、線にはならない。

 ここで私は「1つ目の葛藤」を経験していた。それまで当たり前だと思っていた前提——DX=ツール導入——が揺さぶられる。しかし、では代わりに何をすればいいのかが、まだ見えていなかった。

 転機は、講座の「後」に訪れた。

 講座が終わると、大半の参加者は帰っていく。しかし何人かは、そのまま残っていた。決まったテーマがあるわけでもなく、仕切る人間もいない。それぞれの現場の話、失敗談、愚痴、問いが混ざり合う。異なる業種、異なる立場の人間が、ただ話し続けていた。

 講座で「変革が大事だ」と頭では理解できた。しかし、それを自分の現場でどう実現するかは別の話だ。その答えは、整えられたカリキュラムの中ではなく、誰に頼まれたわけでもない雑談の中にあった。

 「うちの会社、ノーコードツール入れたんですけど、情シスしか使ってないんですよね」

 製造業の担当者がぽつりと言った。

 「あー、うちも同じです。現場に使わせようとしたら、『自分には関係ない』って顔をされて」

 別の誰かが笑いながら答えた。

 「わかる。興味がないんですよね、みんな。今のやり方で困ってないから」

 私も黙って聞いていた。というより、聞きながら何度もうなずいていた。まったく同じ経験をしていたからだ。

 社内では絶対に起きない会話だ。ツールが使われない苦しさも、組織の空気への苛立ちも、社内で口にすれば誰かへの批判になりかねない。しかしここでは、同じ経験を持つ他社の人間と、批判の文脈なしに話すことができた。笑いながら話せたのが大きかった。

 こうした会話を重ねるうちに、頭の中でバラバラだったものがつながり始めた。

 情シスが選定し、情シスが導入し、情シスが「使ってください」と差し出す。この構図そのものが問題だったのではないか。一方的に与えられたシステムを、現場が自分ごととして使うはずがない。必要なのはツールの改善ではなく、現場の人たち自身が「自分たちで作れる」「自分たちで変えていい」と思える状態をつくることだった。つまり、スキルの前にマインドセットの転換が必要だった。

 デジタルスキル、心理的安全性、ノーコードツール、現場人材、組織文化——それまでバラバラだった点が、あるとき一本の線としてつながった。

 「現場で働く人たち自身が、自分たちのほしいツールをノーコードで作れるようになったらどうなるか」

 ずっと頭の片隅にはあった。しかし社内で言ったら「そんなことして意味あるの?」と返されるのが目に見えていた。確信が持てないまま動けずにいた。

 それが、あの夜の対話で変わった。同じ壁にぶつかっている人たちの言葉を聞いて、やっぱり間違っていなかったと腹落ちした。その確信が、ようやく行動へと変わった。

 計画された講座ではなく、残った者たちの雑談こそが、その転換点になった。

次のページ
社内に戻ると、言葉が通じなくなっていた

この記事は参考になりましたか?


広告を読み込めませんでした

広告を読み込み中...

  • Facebook
  • X
  • note
EnterpriseZine Press連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

熊本 耕作(クマモトコウサク)

 公益財団法人九州先端科学技術研究所(ISIT)特別研究員。現場から経営戦略、組織開発、AI活用まで——部門と領域を越えて全体をデザインする"越境型DXアーキテクト"。
 20年にわたり、現場に深く入り込みつつ全社を俯瞰して構造を再設計。製造・調達・物流のDXからAIによる人員配置最適化、生成AIの全社展...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/24042 2026/04/14 09:00

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング