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EnterpriseZine Day 2026 Summer レポート

東大・江崎教授×IBM・藤田氏と考える、AI時代のITインフラはどうあるべきか? 

AIエージェントの台頭、企業に求められる対応とは

AIを目的化せず、古いルールを捨てる 今こそ“本当の内製化”へ

谷川:これから企業は、どのようにAIインフラを捉え、投資していくべきでしょうか。

江崎:短期的には、サンドボックスのような環境で経験することを楽しみ、何が起こっているのかを把握できる人材を確保することが重要です。また、これからはSlerなどでもプログラミングするような仕事が相対的に減っていくため、アーキテクチャを理解できる人材も貴重になります。中長期的には、IT投資が大きくなる中で、その資金をどのように確保して投資すべきかを描ける「財務のプロ」が求められます。目の前のサービス価格だけではなく、将来を適切に予測しながら投資する必要があります。

藤田:IBMでは、自社のAI活用を進めており、昨年実績で約7000億円のリターンをAIによって得ています。ここで重要なことは「7000億円の効果があった」と把握できていることです。今AIインフラにどれぐらい投資していて、どのくらいの工数を削減でき、キャッシュを生み出せているのかを可視化することが重要です。IBMはApptioを買収しており、同社がもつTBMという考え方でIT投資の状況を可視化するソリューションも提供しています。これらを使い、投資対効果を見極めていくことで次の手が打ちやすくなります。

日本アイ・ビー・エム株式会社 テクノロジー事業本部 技術戦略本部 執行役員 兼 技術理事

日本アイ・ビー・エム株式会社 テクノロジー事業本部 技術戦略本部 執行役員 兼 技術理事
藤田 一郎氏

約30年にわたり、コンサルティング部門にてアーキテクトとして金融・製造業の基幹系システム構築を支援。JavaやWebサービス分野の著書を多数執筆し、ベストセラーを含む実績を持つ。2021年に技術理事就任。2023年よりIBM全製品のデリバリーを担うプロフェッショナル・サービス部門を統括。2026年からは技術戦略本部長として、セールスからデリバリーまでの技術戦略をリードし、500名超の技術者とともに企業変革の支援に従事

江崎:もう一つ大切なことは「内製化」です。内製化といっても、自社でエンジニアを抱えてすべて作らせるということではありません。「対等にベンダーと話ができるような力と知識を発注側が持ちなさい」ということです。AIを用いたシステムなどを発注するためには、アーキテクチャがわかり、お金の動きも理解していなければなりません。これができるようになることが、日本企業にとって非常に重要です。

谷川:最後に、企業が変革を進めていく上で、今後重要になる考え方を教えてください。

江崎:AIを使うことが目的ではない、ということです。DXのときもそうでしたが、結局は「ルールを変えること」が本質です。効率化をしようとするとき、一番邪魔になるものは社内規定や法律、慣習です。テクノロジーを入れることを理由に、そうした無駄なルールを「変える」「捨てる」ことができるかどうかが、組織が生まれ変わるために一番重要なポイントでしょう。技術的なアーキテクチャだけでなく、「ルール」というアーキテクチャを変えなければいけません。

藤田:IBMで7000億円もの削減効果が生まれた要因の一つに、「Eliminate(排除)、Simplify(簡素化)、Automate(自動化)」という原則に基づいたことが挙げられます。無駄なものを全部そぎ落とし、簡単にし、そこに最後の手段としてAIを入れると一番効果が得られた。この考え方は業務だけでなく、アーキテクチャにも適用できます。レイヤーごとに無駄を省き、最適化した上でAIを入れなければ、無駄にGPUリソースを消費するだけのシステムが出来上がってしまいます。

江崎:気をつけなければいけないのは、日本人は「無駄を省くこと」と「最適化」を混同しがちだということです。工学部ではずっと効率化の話ばかり習ってきましたが、最適化しすぎると環境が変わったときに身動きがとれなくなります。効率化を言い訳にするのではなく、本当に無駄なルールを捨てるという、“変化のための体力”をつけることも重要です。環境が変わった瞬間にやり方を変えられるかどうか、ここが勝負どころになります。

谷川:AI活用が目的化すると、単なる効率化に走ってしまいます。だからこそ、AIを理由にして古いルールを捨て、柔軟でいることが重要ということですね。

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この記事の著者

岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)

1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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