BIツールはAIに吸収されるのか?存続するのか? ガートナーが2つの立場で議論した「BIの未来」
エージェンティックAIの台頭で「Analytics as Code」は現実のものに?
「AIがBIを吸収する」の意味するところ
これまでのBIツールは、単独ではインサイトを得た後のアクション実行は守備範囲外であり、ビジネスユーザーは途中で別のツールに移って操作する必要があった。この非効率は、MCPサーバーを経由すればなくなる。もっといえば、アナリストが用意していたダッシュボードやレポートのUIがなくても、同じようにインサイトを得られる未来が見えてきた。「データ&アナリティクス(D&A)に限らず、どのようなデジタルアクションでも究極的にはすべてが『チャット駆動型』になっていく。そうでないものを用意しても、IT部門に文句が来るだけだ。D&Aは、必ずチャット駆動型になる」と、BIの未来をサン氏は示した。
最終的に、組織はチャット駆動型の単一レイヤー上でアクションを実行する。BIツールベンダー側から見ると、これは非常に大きな転換になるだろう。「この変化はBIだけでなく、アプリケーション開発にも影響する」とサン氏。BIがインサイトのために存在するならば、アプリケーション開発はアクションのためにあり、この2つは統合インターフェースでつながっていく。「AIがBIを吸収する」とは、その未来を指しての表現だとした。
既にTableauはSlackとの連携、Power BIではMicrosoft Teamsとの連携で、会話の流れからインサイトを得られる。チャット駆動型でインサイトが得られるように見えるが、サン氏が展望するチャット駆動型のD&Aはそうではない。前者との違いは、コーディングエージェントが「Analytics as Code」を実現している点にある。Slack・TeamsからTableauやPower BIを呼び出せるのはダッシュボードやレポート、各種指標のようなアナリティクスアセットが既に存在するためだ。アセットを使えるようにした人と、その人の成果があって実現できているに過ぎない。
しかし、チャット駆動型のD&Aは違う。SalesforceやMicrosoftのエコシステムを越えて、Claude Codeのようなコーディングエージェントを直接動かし、ゼロから新しいものを作る。サン氏は、「Tableauにしろ、Power BIにしろ、これまでは自社独自の閉じられたソフトウェアだった。しかし、コーディングエージェントでAnalytics as Codeが可能になる」と説明した。
「AIファースト」組織になるため、やるべきこと
今後に向けて企業は、AIネイティブとあわせて「AIファースト」についても議論する必要がある。ガートナーとしての定義はないものの、「AIファーストとは、エンドユーザーのAIとの向き合い方である」とサン氏は述べると、“AIファースト”でのBIツール活用についてアドバイスをくれた。
まずは、AIファーストに向けた準備をすることだ。これまでアナリストがやってきたドラッグ&ドロップでの設計だけでなく、フィルターの設定、クリックによる要素の深掘りといったBIツール上の画面操作をすべてコードで表現できるのがAnalytics as Codeである。D&Aリーダーたちには、エージェントで何ができるのかを学ぶことが求められている。
次に、より良い「セマンティックレイヤー」の整備だ。ビジネスユーザーが質問を投げかけたとき、ユーザーの担当業務に沿った文脈で結果が得られるようにしたい。そのためには、ビジネスコンテキストが充実したセマンティックレイヤーが整っていることが前提になる。
最後に、再利用可能な「ドメイン特化型のアナリティクスロジック」を整備することも重要だ。たとえば、顧客の解約要因の分析とサプライチェーンの分析では、インサイト提供のロジックは異なる。AIが状況に応じて、最適なものを使えるようにしておきたい。
ここまでが「AIがBIを吸収する」という立場からの見解であるが、「BIは存続する」という立場からはどのような反論があるのか。サン氏は、別の視点からの見解を紹介してくれた。
まず、アナリティクスとは「組織の慣性」に組み込まれた業務であり、そう簡単になくなるものではないという主張だ。たとえば、TableauやPower BIを導入して使い始めたのはいいが、しばらくするとデータをExcelにエクスポートしたくなる。便利になったはずなのに、今までの習慣を変えられない。元に戻ろうとする。これが組織の慣性であり、新しいアナリティクスへの移行は短期間では進まない。
次に、長年のビジネスを通して培われてきたKPIや評価方法が定着していることも、BI存続の意見を裏付ける。D&Aリーダーたちは、(業績のような)ビジネスKPIの数字と真面目に向き合おうとする。ChatGPTにおもしろい画像を描いてもらうこととは異なり、出力結果は信頼できるものでなくてはならない。信頼に懸念がある以上、今のやり方を変えようとは思わない。コーディングエージェント経由でインサイトを得られるようになるにしても、100%の精度で結果を得ることはできないという問題もある。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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