「ITを知らない経営層」が投資を判断する実態……日本の製造業が手本に? 失敗しないIT戦略の描き方
第1回:なぜ日本のITプロジェクトはうまくいかないのか? 生成AI時代でも変わらない本質とは
米国と20倍の差……日本企業が「ITプロジェクト不得手」なワケ
筆者が自身の経験から導き出した結論として、「ITプロジェクトの成功には意思決定者の危機感とリテラシー向上が不可欠である」というものがあります。
このように説明すると、「そんなの当たり前じゃないか!」「人のせいにするな!」などと思う人もいるでしょう。もちろん、一つひとつのITプロジェクトの成功や失敗の背景には様々な要因があり、場合によっては現場のチームやベンダーのプロジェクトの進め方が失敗につながっているケースもあるでしょう。しかし、マクロの視点で見てみると、日本企業がITプロジェクトを事業に活かせているかどうかが分かります。この現状を客観的に把握するデータとして、内閣府が公表しているIT投資の国際比較の統計があります。
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上図を一見して分かる通り、日本は過去20年の間、IT投資の金額でも生産性もほぼ平行線のままです。これはIT投資が事業につながる成果を出していないために、再投資が行われていないことを意味します。さらに、経済全体の観点で見ると、日経平均株価は約30年停滞しているのに対し、米国では同期間でおよそ20倍の成長が見られています。
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この彼我の差の大きな要因は、米国でAlphabet(Google)、Apple、Microsoft、Amazon、Meta(Facebook)、NVIDIAなどのIT企業が経済をけん引している点にあります。皆さんもご存知のとおり、これらの企業の創業者や経営者はITの専門的な教育を受け、ガレージで試行錯誤しながらビジネスを立ち上げ、事業を拡大しています。ITについて十分な教育を受けて知識を身に着け、多くのプロジェクトを自ら立ち上げている人材が、現在の米国経済をけん引しているといえるのです。
対して、日本企業では意思決定者のITとプロジェクトに関するリテラシーが不足していることが少なくありません。結果として、IT投資が事業成果に結びついておらず、「タマゴを産むニワトリ」となっていないことは明確です。ITプロジェクトは専門家の人件費が積み上がって数千万円から億円単位の大きな投資となるため、ほとんどの日本企業においてその決裁者は経営者。そのポジションにある人のITとプロジェクトに関する理解度が決定的な要素になるのです。
「コストカットの概念」が日本のITを廃れさせる? 継続投資に成功する企業の特徴
日本と海外、特に米国とのIT投資の差が顕著になった背景には、日本におけるバブル崩壊後の「失われた30年」があります。経済成長が見込めない状況で、多くの企業が短期的な収支の管理に意識を集中させ、コストカットを主要なテーマとして事業に取り組んできたのです。その中でIT投資は、パソコンを購入したり、ソフトウェアを導入したりといった必要最低限のインフラ整備やセキュリティ対策に、その多くが割り当てられてきました。
また、それらの施策はほとんどが単年度予算の「調達」のプロセスで行われてきたため、新規事業やDXなどの新しい取り組みを行ったとしても、継続的な投資とはならず、尻切れトンボで終わってしまう結果を繰り返していたのです。
現在の複雑なビジネス環境において、単発プロジェクトだけで事業の成果に結びつけることは容易ではありません。たとえば、初期プロジェクトでECサイトを立ち上げても、ユーザーの意見に応えて機能や利便性を改善したり、マーケティングや広告のプロジェクトを継続に行ったりすることで初めて成果に結びつけることができますが、単年度予算の調達のプロセスでは、そうした中長期にわたる連続的なプロジェクトへの投資が困難となるのです。
また、コストカット中心の考え方に則ると、ITプロジェクト予算は調整しやすいよう「外注費用」として外部化されます。つまり、何かプロジェクトを実施する際も、外部のベンダーに委託することが当たり前になったのです。これは、IT人材の偏りという形で統計にも表れています。
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日本にいると、IT人材がIT企業に多く在籍していることは自然なことのように感じますが、実は諸外国では事業会社や公的機関のほうにより多くのIT人材が在籍していることをご存知でしょうか。こうした日本特有のIT人材の偏在は、「ITやプロジェクトの知識や経験が浅い人が意思決定や発注を行い、知識と経験の多いプロフェッショナルが実行する」ことで生じる“リテラシーの格差”を生み出しやすくなっています。こうした構造もIT投資を成功させることが難しい要因になっているのです。
では、日本企業は経営者のITリテラシーがないために投資を成功させることができないのかというと、そんなことはありません。この構造的な問題の解決の糸口は、労働生産性を詳しく検討することで見えてきます。
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- この記事の著者
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橋本 将功(ハシモト マサヨシ)
パラダイスウェア株式会社 代表取締役
早稲田大学第一文学部卒業。文学修士(MA)。IT業界25年目、PM歴24年目、経営歴14年目、父親歴9年目。 Webサイト/Webツール/業務システム/アプリ/組織改革など、500件以上のプロジェクトのリードとサポートを実施。「プロジェクトマネジメントの民主化」の実現...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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