企業のシステム環境にパブリッククラウドが定着して久しい。維持コストの問題を十分に認識しつつも、10〜20年も「塩漬けシステム」を抱えざるを得ない悩みは、日本企業に特有のものではない。本稿では、レガシーシステムのモダナイゼーションの中でも難関の「データベースの移行」に焦点を当て、最新のテクノロジーでどこまで容易になるのかを探る。
調達を取り巻く環境変化 企業の問題意識
オンプレミス環境のシステム維持に逆風が吹いている。維持コストの問題は以前から指摘されていたが、新しい問題も浮上してきた。グーグル・クラウド・ジャパンの大久保順氏が指摘するのは、2025年後半から顕在化してきた半導体不足による「ハードウェアの調達リスク」である。
従来は償却タイミングにあわせて計画的にハードウェアを入れ替えればよかったが、経済情勢の変化でその前提が崩れてきた。オンプレミスでの現状維持を考えていた企業に対し、ベンダーから「予定の納期に間に合わない」と告げられるケースが既に出てきているという。さらに、ここ数年の円安も悪材料となり、想定外のコスト増も重なるなど、ハードウェア更改のスケジュール変更を迫られている。
とはいえ、AI活用を見据えたモダナイゼーションの必要性を認識する、好機と受け止める見方もあるようだ。オンプレミス環境のシステムを残したままでは、データがサイロ化し、人間だけでなくAIのデータ活用にも支障をきたす。クラウドへ移行してデータを集約すれば、エージェンティックAI活用の土台を整えやすい。一方、AIエージェントによるアクセスパターンの変化への対応という新しい問題も見えてきた。
「これまで社内システムのインフラ設計では、全従業員が同時にアクセスする状態を最大と想定していればよかった。ところが、AIエージェントを活用することになれば、アクセスはその想定を超える。さらに、人間の場合はシステムの出力結果を見て、考え、反応するまでの間にタイムラグがあるが、AIエージェントにはそれすらない。オンプレミス環境のままでは、こうしたアクセススパイクに耐えられない。そこに対応しなくてはならない」(大久保氏)
この変化に対応する手段の一つが「クラウドデータベースへの移行」である。必要に応じてスケールイン/スケールアウトできるクラウドの特性が、エージェントのワークロードを支える上で重要性を増している。これは、「人間のスケールからエージェントのスケールへ」という発想の転換を促すことも意味する。企業はクラウド移行のメリットを理解しているものの、実行に踏み切るにはチャレンジも多い。特に、日本企業の場合には体制のハンディもある。データベース移行を自社だけで完結しようにも、データベースエンジニアが揃っていないケースが多い。仮にデータベース管理者として社内運用を担えるエンジニアがいたとしても、移行自体には別のスキルセットが求められるため、適切なサポートを得られる体制を整えなくてはならない。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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