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EnterpriseZine編集部が最旬ITトピックの深層に迫る。ここでしか読めない、エンタープライズITの最新トピックをお届けします。

『EnterpriseZine Press』

2026年冬号(EnterpriseZine Press 2026 Winter)特集「AI時代こそ『攻めの経理・攻めのCFO』に転じる」

NTT西日本の変革を支えたトップガンITアーキテクトの挑戦──専門性の深化から組織変革、そして次世代技術戦略へ

NTT西日本が生成AIの次に見据える「数理最適化」による変革 なぜ次世代の武器となり得るのか?

数理最適化のネイティブ化で切り拓く、日本の競争優位性

なぜ今、「数理最適化」なのか NTT西日本が取り組む理由

 NTT西日本が数理最適化のネイティブ化に取り組む理由は、大きく2つあります。

 一つは、他社との差別化です。クラウドや生成AIといった技術は、既に多くの企業が取り組んでいます。今後、企業が競争優位性を築くには、他社がまだ本格的に取り組んでいない領域に先行投資し、ノウハウを蓄積する必要があります。

 数理最適化は、まさにその領域です。理論的には確立されているものの、実案件での適用はまだ限定的です。NTT西日本が数理最適化のデファクトスタンダードを確立できれば、技術力のブランディング、新規サービスの創出、国・地域への貢献といったメリットが得られます。

 もう一つは、産学連携課題の解決です。日本の産学連携には、構造的な課題があります。大学では最先端の研究が行われていますが、それが企業の実案件に適用されるまでに長い時間がかかります。私は、博士号を持ち、大学で講師をしながら、NTT西日本で実案件に取り組んでいます。この立場を活かし、大学の最新研究を企業の実案件に適用し、逆に企業の課題を大学の研究テーマとして提供する、双方向の産学連携を推進しています。

実案件での「数理最適化」適用事例①:人事異動における人員配置の最適化

 NTT西日本で、実際に数理最適化を適用している事例を2つ紹介します。

 1つ目の事例は、人事異動での人員配置の最適化です。従来の採用プロセスでは、面接官の主観的な評価に大きく依存していました。しかし、主観的な評価には、面接官によるバラつき、バイアスの混入、入社後のパフォーマンス予測の困難さ、といった課題があります。そこで、私たちはデータドリブンな採用を実現するため、以下のアプローチをとりました。

 まずは、過去の採用データを分析。エントリーシートの内容、筆記試験の点数、面接評価、そして入社後の人事評価を紐づけました。その上で、機械学習を用いて、入社後に高いパフォーマンスを発揮する社員の特徴を特定。数理最適化により、限られた内定枠の中で、将来の期待パフォーマンスが最大となる採用者の組合せを求めました。

 ここで重要なことは、配属部門のバランス、多様性の確保、地域バランスといった制約条件を満たす必要があることです。これらの制約条件のもと、全体の期待パフォーマンスを最大化する組合せを求めることは、典型的な数理最適化問題です。

 最終的に、高い精度で入社後に高評価を得る社員を予測できるようになりました。2026年度は、この手法を実際の採用活動でトライアル的に適用する予定です。さらに、人事異動の最適化にも適用する計画があります。

実案件での「数理最適化」適用事例②:ネットワークリング設計の自動化

 2つ目の事例は、ネットワーク設計部門でのネットワークリング設計の自動化です。

 NTT西日本では、西日本全域に通信ネットワークを構築・運用しています。ネットワークの信頼性を高めるため、「リング型ネットワーク」という構成を採用しています。

 しかし、このリング設計は極めて複雑なものです。拠点の数と位置、回線容量、コスト、遅延、既存設備との連携など、多くの要素を考慮する必要があります。従来は、熟練のネットワーク設計者が経験と勘に基づいて設計していました。しかし、設計に時間がかかるだけでなく、属人化を招いたり、最適性の保証がなかったりと問題を抱えていました。

 そこで、私たちはネットワークリング設計の自動化に取り組みました。この問題は、グラフ理論における「巡回セールスマン問題」の拡張版と捉えることができます。

 私たちは、問題の数理モデル化、ソルバーの選定とチューニング、クラウドPoC環境の構築を行いました。結果として、当初想定していたスケジュールを大幅に前倒しし、短期間でPoCを実施できました。現在、実業務でのトライアルを準備しており、導入判断を予定しています。また、この技術は特許申請中です。ネットワークリング設計の自動化により、設計時間の大幅短縮、設計品質の向上、ノウハウの共有、コスト削減といった効果が期待されます。

次のページ
NTT西日本の事例から見えた、日本企業がとるべき針路 「数理最適化」のデファクトスタンダード化戦略

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この記事の著者

高須賀 将秀(タカスカ マサヒデ)

博士(情報学)。2012年に修士号を取得した後、NTT西日本株式会社に就職。プライベートクラウド基盤やアプリケーション開発を経験した後、様々な技術(NW、サーバ、クラウド、プログラミング)を組合せることで、データ活用を推進するためのプラットフォームを運営。2019年から社会人ドクターとして研究活動を...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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