NTT西日本が生成AIの次に見据える「数理最適化」による変革 なぜ次世代の武器となり得るのか?
数理最適化のネイティブ化で切り拓く、日本の競争優位性
ジョブローテーションからの脱却、数十億円規模のコスト削減、そして組織へのスケール。NTT西日本における変革ストーリーの最終章は、将来への展望である。生成AIブームの陰で、その限界も明らかになってきた。ハルシネーションの課題を解決し、真の意思決定支援を実現する次世代技術として「数理最適化」が注目されている。NTT西日本では、博士号を有するトップガン人材が、数理最適化の実案件適用と社会実装を推進している。本稿では、NTT西日本の事例をベースに、日本企業が進むべき指針を提示する。
変革ストーリーの最終章 「次世代の武器」をどう手にするか
第1回では専門性を特化させるという決断、第2回では数十億円規模の成果創出とNTT東西共同利用化の壁の突破、第3回では1人の成功を組織全体にスケールさせるための取り組みをお伝えしてきました。
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最終回となる本稿では将来への展望として、私たちがどのような武器で戦おうとしているのか。その鍵となる「数理最適化」についてもお伝えします。
生成AIブームとその限界
2022年末にChatGPTが登場して以来、世界は生成AIブームに沸いています。しかし、生成AIには根本的な限界があります。それが「ハルシネーション」です。
ハルシネーションとは、AIが事実でない情報をあたかも事実であるかのように生成してしまう現象のこと。生成AIは、膨大なデータから統計的にもっともらしい回答を生成しますが、その回答が真実であることを保証するメカニズムを有していません。特に、最適解を求めるような問題において、生成AIは不向きです。
たとえば、「配送ルートの最適化」を考えてみましょう。11ヵ所の配送先を訪問する順序を決める場合、10! = 3,628,800通りの組合せがあります。生成AIは、「過去のデータから、こういう順序が多かった」という統計的な回答は出せますが、「数学的に証明可能な最適解」は導き出せません。
企業の意思決定において、「もっともらしいが間違っているかもしれない提案」は、極めて危険です。特に、コスト削減やリソース配分、スケジューリングといった、経営に直結する意思決定においては、数学的に保証された最適解が求められます。そこで注目されるのが「数理最適化」です。
数理最適化とは、制約条件のもとで目的関数を最大化または最小化する変数の値を、数学的手法によって求める技術です。また、3つの特徴を持ちます。第一に「数学的な保証」です。得られた解は、「これが最適解である」ということが、数学的に保証されます。ハルシネーションは起こりません。第二に「説明可能性」です。なぜその解が最適なのか、すべて数式で説明できます。第三に「汎用性」です。配送ルート最適化、シフトスケジューリング、設備配置最適化など、極めて幅広い問題に適用できます。
数理最適化には専門知識の壁と計算コストの壁がありましたが、状況が変わりつつあります。クラウドコンピューティングの普及により、大規模な計算リソースを安価に利用できるようになりました。さらに、オープンソースソルバーの充実により、誰でも無料で高性能な数理最適化ツールを利用できるようになりました。
今こそ、数理最適化を「一部の専門家のための特殊技術」から「誰でも使える標準技術」にする、数理最適化のネイティブ化を実現すべきタイミングです。
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- この記事の著者
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高須賀 将秀(タカスカ マサヒデ)
博士(情報学)。2012年に修士号を取得した後、NTT西日本株式会社に就職。プライベートクラウド基盤やアプリケーション開発を経験した後、様々な技術(NW、サーバ、クラウド、プログラミング)を組合せることで、データ活用を推進するためのプラットフォームを運営。2019年から社会人ドクターとして研究活動を...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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