ブレインパッドおよびBrainPad AAA(プレインパッド エーキューブ)は2026年7月6日、フィジカルAIの社会実装を支援する現場特化型AIエージェント「COROKO」シリーズの第3弾として、作業映像を解析し業務改善を支援する新サービス「COROKO Analytics(コロコ アナリティクス)」の提供を開始。それに関する記者会見に登壇したBrainPad AAAの代表取締役社長CEO 辻陽行氏は、日本の現場がもつデータを活かし、技術や資本で先行する海外勢に対抗するための戦略と、新サービスがもたらす業務改善の具体的な仕組みについて説明した。
辻氏は会見冒頭、政府が成長戦略を構成する「戦略17分野」の筆頭にフィジカルAIを位置づけ、5年間で最大1兆円規模の公的資金を投入しようとしている背景に言及。米国などの諸外国におけるAIロボットの導入動機が主に「人員削減によるコスト最適化」であるのに対し、日本における動機は「そもそも現場を維持するための人がいない」という問題に起因しているという。日本の労働力人口は今後20年間で1500万人減少すると見込まれており、2030年代には物流の停滞により全荷物の3分の1が運べなくなるリスクや、高所鉄塔などのインフラ維持を担う熟練技術者が不足する危機が現実味を帯びている。
こうした中で、2040年までに世界の市場規模が60兆円、国内でも20兆円の市場獲得を目指す国家目標が掲げられている。日本は産業用ロボットの生産において歴史的な世界シェアを誇り、災害対応や製造現場、福島第一原子力発電所の廃炉作業などを通じて膨大な現場データを実環境で保有している優位性があるという。しかし、AI専門人材は日本国内に約200万人にとどまり、2040年には339万人が不足するという試算もある。
加えて、ITエンジニアの給与水準や企業の資本規模においてもグローバル市場で大きな差をつけられており、単に技術を高めるだけでは諸外国に勝てない。辻氏は、この競争環境において日本企業が優位性を保つためには、現場に眠る暗黙知のデータをいかに素早くAIが扱える形式へと変換し、実用的なソリューションに落とし込めるかが勝負の分かれ目になるとした。
日本企業がフィジカルAIを本格的に導入しようとした際、その実装を阻むボトルネックとして、同氏は以下3つの壁を挙げる。
- 残余リスクの配分問題:自律型AIが現場で失敗や事故を起こした際、現行の法規制や製造物責任法ではソフトウェアを製造物とみなすことが難しく、責任の所在や損失を引き受ける主体が曖昧になる。たとえば米国で自動運転のライドシェアを展開する企業などは、再保険会社と組んで独自の保険制度を構築しリスクを移転しているが、日本は国や保険機関がこうしたリスクの受け皿を整備しない限り、民間企業が単独で商用利用を進めることが困難
- 人材不足:実装を担う専門人材が不足しているうえに、その人材が東京に一極集中しているため、本当に困っている地方の現場に届かない
- グラウンディング(意味づけ)不足:従来の業務記録や指示書は文字や単純な数値で書かれているが、これだけでは作業の文脈や空間的・時間的な定義が欠落してしまう。AIに仕事をさせるためには、現場の人間が目で見て判断している作業の意味をAIが理解できる形で定義しなおす必要があるが、このギャップを埋める作業に膨大な人手と時間がかかっていた
今回提供が開始された「COROKO Analytics」では、3つ目のグラウンディング不足というボトルネックを解消する。同サービスは、現場にすでに設置されている定点カメラなどの作業映像や関連資料をAIエージェントが解析し、ムダな動作や工程のボトルネックを自動で特定。AIエージェントが「探索・解析・検証・改善」というサイクルを自律的に繰り返す「ループエンジニアリング」と呼ばれる手法を採用している点が特徴だという。
従来、どの動きを価値のある正味作業とし、どの動きを付随作業とするかの定義づけは、人間が時間をかけて行う必要があった。同サービスでは、AIエージェントが映像と定義を照合して実測し、ばらつきを評価しながら自律的に判断基準を詳細化していくため、人間が詳細なルールをあらかじめ作り込む必要がない。これにより、従来数週間を要していた工程分析が短縮され、現場の負担を最小限に抑えながら精緻な標準作業時間の計測が可能だとしている。
最終的にAIエージェントだけで判別が難しい微妙な境界線については、人間の管理者が最終判断を下す仕組みを取り入れている。これによりAIの誤認識によるリスクを抑えつつ、現場の実態に即した精度の高い標準作業票が自動生成されるとのことだ。
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