現場が直面している課題
実際に現場が直面している課題には、どのようなものがあるのか。例として大規模プロジェクト現場などを想定してみよう。集められた情報を元に、要件・工程ごとに開発を受託した請負企業に発注がなされる。請け負った企業では、指示に基づき開発計画書を作成し、審査を受け承認されれば開発作業へと移行する。
この一連のプロセスの中で、まず1 つ目の課題として挙げられるのが、作業手順などの作成方法が各々の担当者の頭の中にあり、属人化しているケースだ。多くの場合、過去に作成したドキュメントを新しい案件用に修正し利用するが、どのドキュメントを参考にすべきか、それが最新なのかはそれを作った人にしか分からないことも多い。
2 つ目の課題は、過去から今回どの部分が修正されたのかが分かりにくいことが挙げられる。現場が異なればその違いに合わせる必要があり、最初の計画を現場で随時修正する。修正部分や内容がはっきりしないと、審査や承認に時間がかかり工期遅延やチェック漏れの原因にもなりかねない。
3 つ目は、現場での変更作業を行うのに書類フォーマットの変更などに手間がかかる現実もある。仕様書作成などにはExcelなどを用いることが多いが、長年にわたり複雑化していて担当者が容易に修正できないのだ。
4 つ目の課題は、承認者が承認すべき作業手順書の進捗状況を把握しきれないことも挙げられる。通常、複数の承認案件が並行して進んでおり、優先順位を明確にし迅速に対処することは難しい。この場合も個人の能力に依存して、承認作業が進められていることが多いのだ。これらの課題のせいで過去の間違いを繰り返したり、さらに他の部署でも同じ失敗をしてしまうこともある。
「大規模プロジェクトなどでは、ちょっとしたトラブルも工程遅延となり、それが大きな損失につながることもあります。ノウハウ等が属人化し共有できないことがこれらの原因であり、ITを活用すればその課題を解決できる可能性は極めて高い」と吉村氏は指摘する。
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