ある日の夕方、運用管理担当者が帰宅しようとしたところ「今日、緊急で本番環境にパッチを適用したいのだけど」と、開発担当者から電話が掛ってきました。事前の申請が必要なことを伝えると「それは判っているが上司が外出しており、申請は事後にさせて欲しい」と食い下がられました。運用管理担当者は、出張で不在の上司である運用管理部長に電話で状況を報告し、部長から「事後申請を必ず行う」、「運用管理側は何があっても一切責任を負わない」の2点を開発担当者の上司からメールにて提出して貰うことで、許可を取りつけました。運用管理担当者は急きょ残業し、作業に立ち会いました。
リリース申請の管理が大変
ウチの会社では、申請内容が入力されたスプレッドシートをメールに添付してリリース申請を行います。緊急度や重要度が高い申請を優先的に処理しなければならないのですが、たくさんの申請メールの中から「どの申請を優先して処理すべきか」を調べるだけで時間を取られてしまっています。
スプレッドシートとメールは基本的には業務の効率化に役立つツールですが、関係者の人数や管理すべき処理の数が多くなると効率が下がります。相談内容にもあるようにメールの中から情報を探し出すための負荷が大きくなりますし、その結果、バグ対応などの優先すべきリリースが後回しになってしまう可能性もあります(=品質低下)。
よって、スプレッドシートとメールによる管理は、関係者や管理対象が少ないごく限られた業務に限定するべきです。リリース管理は内部統制の「核」にあたる部分ですから、よほど規模が小さい場合を除いて、ワークフローツールなどによる管理体制を整えるべきでしょう。
ワークフローツールで、各申請の緊急度や重要度などを簡単に確認できるようにすると、優先的に処理すべき申請がひと目で把握できるようになります。また、申請の対応状況などもわかります。「Aさんは別の申請の対応で忙しいので、この申請はBさんに代わってもらおう」といった業務負荷の平準化もできるようになります。
統制の視点という意味においても、ワークフローツールの導入は有効です。例えば、監査人から「平成22年8月31日に実施した承認者情報とリリース内容を含めたリリース一覧を出してください」と依頼があった場合のことを考えてみてください。
スプレッドシートとメールで業務を回していると、「大量のメールの中身を確認しながら一覧を作成し、時間を掛けて確認したにも関わらず一部漏れがあり、再度一覧を作成し直し・・・」という状況に陥ってしまいます。
これでは監査のたびに現行業務が圧迫され、既存業務が滞ってしまうという本末転倒な状況になります。ワークフローツールが導入されていれば、日付などで検索すればすぐに履歴を閲覧できます。監査対応の負荷は劇的に削減できるでしょう。(次ページへ続く)