米現地時間2026年10月13日、IFSは米・オーランドでフラッグシップイベント「IFS Unleashed 2026」を開幕した。隔年で開催するIFS Unleashedは、顧客やパートナーが集う同社最大のイベントだ。今回、産業用AI(Industrial AI)を軸に新製品や事業戦略が発表された。

初日の基調講演に登壇した同社 CEOのマーク・モファット(Mark Moffat)氏は、熟練労働者の不足や電力・資材の逼迫といった課題に触れた上で、多くの現場がポテンシャルの約60%でしか稼働できていない現状について指摘。その多くが探し物や書類の記入、待機時間に費やされているとした。そして、AIが浸透してきた今、残る40%を引き出す好機が訪れており、企業が経済成長を手にするための近道になるという。
そこで今回、IFSは新製品である「IFS Intelligence」を発表した。

IFS Intelligenceは、IFS Cloudをはじめとする同社製品、他社システムにある設備・業務データを横断的に参照することで、「いま現場で何が起きているのか」「次に何をすべきか」といったユーザーの疑問に対話形式で根拠を示しながら答える、統合的なAIソリューション。回答を基にした作業は、人が承認して初めて実行される仕様だ。実際にユーザーがIFS Intelligenceを利用する際の主要機能は、次の3つだ。
- Cowork:人が主導し、AIが補佐する“デジタルの同僚”。設備や業務に関するデータを基に原因を特定し、対応策を用意する。なお、エージェントが実行に移すためには、人による承認が必要だ。また、Coworkによる回答結果は「Lens」として保存でき、以降はいつでも最新のデータを反映した状態で確認できる。うまくいった作業手順は「Skill」として保存でき、他の担当者にも共有可能。さらに、MCP経由でMicrosoft 365などの外部サービスとも連携できる
- Loops:事前定義したワークフローをAIエージェント「デジタルワーカー」に実行させるための機能。デジタルワーカーはバックグラウンドで24時間動き続け、判断・承認が必要な場面でのみ、人に確認を求める。顧客対応や資材調達、財務管理など、工程ごとに役割の異なる複数のデジタルワーカーを1つのチームとして連携させることもできる。また、「Agent Studio」を用いることで、自社の業務にあわせたデジタルワーカーをノーコードで作成可能。これにより、従業員の採用を待たずに現場の処理能力を増強できる
- Runway:IFSに自社独自の機能を追加したり、設定を変えたりする作業をAIで短縮する機能。IT部門やパートナー企業が機能要件を自然言語で伝えると、AIエージェントが不明点を質問した上で仕様書にまとめ、コードの作成、テスト、検証環境への反映といった一連のプロセスを自動実行する。現在提供されているのは、追加開発に係る部分。IFS Cloudの設定やカスタマイズ、機能の受け入れテスト、データ移行用のスクリプト作成機能などは、今後数ヵ月のうちに追加される予定だ
これらを支えるための仕組みとして、AIのガバナンスを担う「Industrial AI Harness」も同時に発表された。IFSが提供するAIエージェントは、ユーザーの権限内でしか動作せず、システムへの書き込みにはすべて人による承認が必要となる。また、顧客データはIFS Cloudの内側にとどまり、外部のAIプロバイダーには送られないとのことだ。なお、AIエージェントによる判断・行動ログはすべて追跡できる形で保存される。

こうした安全面の仕組みは、顧客からも評価されている。天然ガス圧縮サービスのKodiak Gas Servicesは、部品調達を担うデジタルワーカーを導入している。同社 CIOは基調講演で、権限管理や監査の仕組みを自前で構築する負担を避けるため、IFS Loopsを選んだと説明し、デジタルワーカーによって取引効率が約85%向上したと述べた。
IFS Intelligenceは、発表と同時に提供が始まっている。ライセンスは「全社包括ライセンス(Universal enterprise-wide license)」として、1つの契約で企業の全ユーザーが利用でき、機能の制限やプランごとの違いはない。AIの実行回数には利用枠があるものの、超過しても利用は止まらず、追加料金も発生しないとする。もし、利用枠を超過した場合にはIFSが利用状況を確認し、適切な利用枠を協議する形となる。なお、日本での提供時期や対応言語については、今回の発表では触れられていない。
また、基調講演にはSiemens Digital SoftwareでCEOを務めるトニー・ヘメルガン(Tony Hemmelgarn)氏も登壇し、年初に発表した両社の提携について説明した。両社のシステムをつなぎ、現場で得られた不具合や保守の実績などを設計部門へ素早く戻すことで、設計の見直しや保守間隔の変更といった判断を短期間で下せるようにするという。両社は、この設計と現場を一巡させる仕組み(クローズドループ)の実現を目指していくとした。
さらに、現場に入り込んで顧客とAIの検証を重ねてきた、IFSの専任チーム「Nexus Black」の活動も事例とともに紹介された。スコッチウイスキー大手のウィリアム・グラント・アンド・サンズ(William Grant & Sons)では、蒸溜所の保守作業を支援するアプリを同チームとともに約12週間で現場に展開している。
なお、IFS Unleashed 2026で発表された内容については、EnterpriseZineで後日詳細をレポート予定だ。
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岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)
1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。
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