HPC界レジェンド「AIインフラで真っ先に限界を迎えるのは“メタデータ処理”」NetAppが出した解
「AIDE」の一般提供開始を追い風に、日本市場拡大を狙う 日本法人社長の戦略
日本法人の戦略 高い「ソブリン」需要にも応えていく
これらの発表を受け、日本ではどのような戦略をとっていくのか。日本法人の代表取締役社長 斉藤千春氏によると、同社の直近の国内業績は前年度比で約40%増の成長を記録したという。この背景には、サービスプロバイダーや大手企業によるAIファクトリーをはじめとする大型AI需要の獲得がある。斉藤氏は、昨年の社長就任時から日本市場において「ぶっちぎりNo.1」を目指すと掲げているが、パートナーとのエコシステム強化を通じてトップシェア獲得へ邁進する構えだ。
日本市場での売上獲得にあたって、大きな追い風になると思われるのが「AIDE(AI Data Engine)」の一般提供開始だという。AI処理の現場において、処理ステップごとに何度も繰り返されるデータの無駄なコピーは、ストレージの圧迫だけでなくデータ準備の遅延を招く最大の要因となっている。AIDEは、こうした課題に対してソフトウェア主導のアプローチを提供する。従来の自社ストレージ環境にとどまらず、他社製NASやクラウド、異種混在なファイル・オブジェクト環境に点在するデータへ一元的にアクセスし、AI-Readyな状態へ素早く変換・供給することを可能にした。これにより、GPUへのデータ供給スピードを高め、投資対効果を極限まで引き上げることができる。
また、現在多くの企業IT部門を悩ませているのが、ハイパーバイザー環境のコスト高騰にともなう脱VMwareやマルチ仮想化基盤の模索だろう。インフラの刷新や見直しを迫られる大企業に対し、同社はNutanixをはじめとする各ベンダーとのアライアンスを通じて柔軟な選択肢を提供する。ストレージの容量拡張性や高度なデータ管理機能を既存の仮想化基盤から切り離して最適化できるようにすることで、既存資産を生かしつつ、ハイパーバイザー移行のリスクやコストを最小限に抑えるデータ基盤の再構築を後押ししているとのことだ。
さらに、地政学リスクの高まりやクラウド利用の進展にともない、大手企業や官公庁を中心に「データ主権(ソブリン)」に対する関心が高まっている点も見逃せない。斉藤氏は、自社の重要なデータをどこでどう管理・運用すべきかという議論が経営層レベルで真剣になされている現状に触れ、どこにデータがあっても一元的にガバナンスを効かせられるプラットフォームの重要性を指摘する。同社では欧州において、セキュリティや法令規制に応えるクラウド型従量課金サービス「Keystone Sovereign」の提供を開始しているが、日本市場においても顧客の要件やパートナーからの要望に応じて同等のソリューション展開を検討していく考えだ。
そのほか、サイバー攻撃が多様化するなか、急務となるサイバーレジリエンスの強化においても同社は優位性を持つという。一般的なストレージ製品が提供する、バックアップ時の感染スキャン機能では、スキャンまでの時間差により被害が拡大するリスクがある。これに対し、ソリューション技術統括本部長の平松貢氏は、同社が一次データ(アクティブデータセット)に対してリアルタイムで異常検知と自動保護を行う仕組みを備えている点を強調する。
分散するデータ環境を直感的に一元管理する統合コンソール「NetApp Console」や、AIが運用を支援するAIOpsの強化を含め、同社はデータ管理、AI活用、データ主権対応、そしてリアルタイム保護に至るまで、現代のIT部門が抱える複合的な悩みに全方位で応えるプラットフォームの進化を加速させている。AI活用とインフラ刷新が交差する今、同社が提示するデータ戦略は、日本の大企業ITリーダーにとって実践的な解となりそうだ。
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