韓国企業の躍進は、日本企業にとって脅威か?
最近、日本のテレビや雑誌など多くのメディアで、韓国企業の躍進ぶりを扱う記事を目にする機会が増えてきている。特に注目されている産業は、IT、半導体、鉄鋼、造船、自動車産業、電子政府・電子自治体、そして冬ソナに代表される、いわゆる韓流ブームに至るまで、様々な分野での韓国企業や文化の活躍状況を取り上げ、今の日本の状況と比較されているものが大半だ。
いまさらという感も無くはないが、同じ韓国人として韓国の発展ぶりを報道してくれるのは大変嬉しいことであり、ありがたい話ではある。しかし、それらの報道姿勢が現在の日本の社会や産業界が抱えている構造的な問題点を指摘し、日本のあるべき姿の方向性や、具体的な実現方法の提示なくして、単なる韓国企業の称賛や日本企業の弱点を並べ、日本経済の不安を煽るだけでは、日本の閉塞感をより濃くするだけで、何の役にも立たないのではないか。
特にメディアの論調の中で、韓国企業の発展が日本企業の衰退に直接影響を与えているかのような二分法には、素直に賛同するには少し抵抗感がある。確かに、様々な分野で韓国と日本の企業の競争は激しくなりつつあるのも事実であろう。それによって日本企業が世界市場で苦労している部分も多いにある。
韓国企業は、朝鮮戦争後の廃墟から40年足らずの短い期間に様々な分野で大躍進を成し遂げて来た。現在では、いくつかの分野で日本企業を追い越し、市場支配者の座に上り詰めた分野も少なくない。 しかし、韓国は、長年にわたり日本との経済、技術交流によって発展してきた。
1970年代の韓国は、今の中国や東南アジア諸国のように人件費も安く優秀な労働力の提供先として、日本の生産基地として、大いに活用されてきたのだ。現在も多くの韓国企業は日本の企業から原資材や生産設備を購入し、それらを使い完成品を作っては世界各国に向けて、「Made In Korea」というレッテルを張って輸出するのである。
つまり、韓国を代表する半導体や液晶テレビ、携帯電話などを製造するにしても、日本の生産設備や核になる原資材、部品などの提供がなければ、何も作れないのも事実である。そのような両国間の産業構造的な理由により、韓国は毎年、日本に対して300億ドル程度の巨額の貿易赤字を記録している。
表1と表2を比較すると、日本国と韓国との貿易状況がよく分かる。この調査結果は、筆者自身も驚くほどの数字である。日本国の対外貿易黒字額と韓国の対日貿易赤字額が年々近づいている印象も受ける。この数字を見る限りにおいては、韓国企業の躍進が日本企業にとって脅威だけではなく、むしろ立派なパートナーであり、非常に重要なお客様であることを示している。(次ページへ続く)