サービスの4大特徴
サービスはハードウェア製品と違った多くの特徴がある。その中でも図1にある4つの特徴が重要である。これらの特徴はサービスマネジメントの難しさの原因となっている。オムロンフィールドエンジニアリング(OFE)では、この難しさをいかにして克服するかを考え、対策を実践してきた。これを逆からみると、この特徴を競争の差別化要素として活用することがいかに大切かを意味している。
サービスには形がないため、顧客にサービス商品のよさを分かってもらうのが難しいという特徴がある。目に見える素晴らしい商品を持っていても営業は難しい。ましてや、目に見えないサービス商品を売り込むのは、それ以上に難しい。
これを解決するために、サービス先進企業ではサービスのよさを顧客に推測してもらう目的でビジュアルな情報システムを構築するなどが工夫されている。多くのサービス会社がコールセンターに投資して、素晴らしい環境を整えているのは、この事例の一つである。
また、サービスは生産と消費が同時であるため、サービスを工場で量産することはできない。顧客も将来のためにサービスを買い置くことができない。また、このサービスのリアルタイム性がサービスは、やり直しがきかないという傾向にもつながっている。
また、サービスは顧客毎に個別の要求に応えなければならない。誰一人同じ髪型をしている人はいないことがこれを表しており、ヘルプデスクサービスは顧客の質問に沿って答えなければ価値はない。
さらに、サービスは顧客と共同生産することが多いことが、ハードウェア製品との大きな違いである。例えば、保守サービスでは顧客が機器に表示されているエラーコードや故障前の機器の兆候などを連絡すると、1回の訪問修理で修理が完了する確率が大幅にあがる。
では、これらのサービスの特徴をもっと詳細に検討してみたい。
形がないサービスを見せる
サービスそのものは目に見えないため、サービスの提供過程を見えるように工夫することが大切である。オープンキッチンのレストランはコックの手際よさや調理のテクニックを披露するなど、サービスの提供過程を見えるようにしている。
OFEが始めたオンサイト保守サービスの進捗状況をWebでリアルタイムに顧客に見てもらうサービスも、保守サービスの提供過程を見えるようにする工夫の一つである。進捗状況をリアルタイムに見てもらうことで、顧客のイライラをなくし、安心してもらうことが少しでも早く直してほしいという顧客の事前期待を効果的にマネジメントしている。
この保守サービスの進捗状況の公開は情報技術としては難しくはないが、保守サービス会社が進捗状況をリアルタイムに公開するのは難しい決断である。サービスレベルアグリメント(SLA)が主張されつつあるサービスマーケットで、マネジメントレベルの低い保守サービス会社はサービスレベルを守れてない証拠データをリアルタイムに顧客に提供することになりかねないからである。しかし、OFEでは「サービスの見える化」の経営方針に沿って、あえて進捗状況の公開に踏み切った。結果的には、顧客に大変な好評を博している。