Nasdaq上場から15年、全世界で18億7,000万ドル(対前年比16%増)、純利益2億7,700ドル(対前年比45%増)と順調な成果を上げた2010年をマイケル・キング 代表取締役社長は「我々にとって重要な年だった」と振り返る。
好業績を後押ししたのは、同社が注力を続けるデスクトップ仮想化製品で、特に日本国内では前年比511%もの成長により売上に貢献した。国内の顧客数は23,000社に拡大し、ニッセイ情報テクノロジーなどの全社的な採用事例も登場しはじめたことを紹介しながら、昨年の戦略発表会で掲げた「デスクトップ仮想化元年」が実現したことを強調した。
また、Webアプリケーションのレスポンスを向上させるアプライアンス製品「NetScaler」も、Amazon Web ServicesやRackspace、Terremarkなど主要クラウド、ホスティング事業者による採用が進んだことで、対前年比で50%の成長を遂げ、業績牽引の材料となった。その他、日本国内では、マイクロソフトやシスコ、富士通との協業を発表するなど積極的にビジネス拡大を図った一年となった。
デスクトップ仮想化の導入目的が単純なコスト削減から、ビジネスのあり方や人々の働き方の変革に変化しつつあると分析するキング氏は、2011年が「ビジネスとITが本当の意味で協業できる年」になると予想する。具体的なキーワードとして挙げるのは「端末」「場所」「クラウド」の3つだ。
スマートフォンやタブレットPCの登場によって、従業員はビジネス用と家庭用に加えて、さらに多くの端末を持つようになった。各メーカーがこぞって新製品を投入する一方で、多くのアナリストが市場拡大を予測しており、ユーザー一人あたりの平均端末数は今後も増えていくことが予想される。
そこで生じるのがあらゆる端末からデスクトップ環境を利用したいという要求だ。「iTuneでは、iPhoneからCitrixの仮想デスクトップ環境に接続するための『Citrix Receiver』がすでに100万件以上ダウンロードされている」(キング氏)こともその証左だろう。
同社ではデスクトップ仮想化と個人PCを組み合わせて端末コストの削減や従業員のモチベーション喚起などを図る「BYO-C(Bring Your Own)」を提案してきたが、今年は3台のデバイスからアクセスする「BYO-3」が主流になると分析。あらゆるモバイル端末からシトリックスのデスクトップ仮想化環境に接続できるようサポート範囲の拡大に努める。
また、仮想デスクトップ環境の快適性も追求する。「社外で仕事をするのは当たり前になった。どこであっても、快適に仕事ができる環境を整備する必要がある」(キング氏)と考えるためだ。動画再生やUSB接続などデスクトップPCと同様の環境を実現するためのユーザーエクスペリエンス関連テクノロジーCitrix HDXの機能強化に注力する。
最後の一つは「クラウド」だ。昨今、ビジネスチャンスと捉えた各ベンダーが独自のクラウドスタックで顧客の囲い込みを図っている状況に憂慮を示した上で、「メリットを享受したいが、特定のベンダーにロックインされるのは避けたい」というニーズに対して、オンプレミス、パブリック・クラウド、プライベート・クラウドの横断的な活用を支援する「Citrix OpenCloud」の提供で応えていくとした。
国内では、ビジネス環境への柔軟な対応や多様なワークスタイルの実現など、単なる仮想化導入にとどまらないコンサルティング・サービスなどを提供することで「顧客企業の変革支援」を行うほか、販売網の拡大を目指してセールスキャンペーンの強化や柔軟なライセンス体系の追加など「パートナープログラムの拡充」を行う。また、オープンソースコミュニティーとの連携などを通して「OpenCloudソリューションの積極的な提案」を図り、「飛躍の年」の実現を目指す。