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Fearless Change - 不安を乗り越えて組織改革を推進するには

Agile Japan 2011~キーノート セッション1:リンダ・ライジング 氏

スマート・モバイルの導入、ビジネス・プロセスの標準化、データ活用の推進、アジャイル開発の導入。組織の中で新しい試みを始める時に直面する、最も大きな壁の一つが周囲の人々の意識だ。いかに優れたアイディアであっても、最初から積極的に賛同してくれる人間は一握り。懐疑的な態度をとる人、状況を静観する人、いかなる変化も拒絶する人。自らとは意見を異にする人々の理解を獲得し、アイディアの積極的な協力者にするためのコツとは?

全ての変化は「信じること」から始まる

リンダ・ライジング氏
リンダ・ライジング氏

 2011年4月15日、日本アイ・ビー・エム本社セミナールーム(東京・中央区)にて、アジャイル開発をテーマにしたイベント「アジャイル ジャパン 2011」が開催された。同イベントは、アジャイル開発の普及・啓蒙と情報交換を目的として、国内のアジャイル開発関連のキーパーソンが一堂に会して講演や事例紹介などが行われるもの。2009年から毎年1回のペースで開催されており、今回が3回目となる。

本稿では、同イベントのキーノートセッション「Fearless Change - 不安を乗り越えて組織改革を推進するには」の内容を紹介する。講演者は、アメリカでソフトウェアパターンの研究とコンサルティングに従事するリンダ・ライジング氏。同氏は膨大な数のパターンの研究および啓蒙活動で広く知られ、ソフトウェアパターン界では「パターンプリンセス」のニックネームで呼ばれている。

 ライジング氏がまず初めに紹介したパターンは、「エバンジェリスト」(Evangelist)。旧態依然とした開発現場にアジャイル開発手法を導入するには、大きな変革を必要とする。従って、アジャイル開発を導入しようとする「その人自身」が、変化の中心に立たないといけない。ライジング氏は、次のように述べる。

 「人は、自分が思うほど簡単には変われない。変化を起こすためには、まずは変化を起こそうとする人自身が、新しく導入しようと思っているアイデアを信じなくてはいけない。まずは信じること、そこからすべてが始まる」

 ビジョンをしっかりと思い描き、変化を恐れず、新たなアイデアの実現を強く信じること。これがエバンジェリスト・パターンだ。これは、ほかのすべてのパターンの前提条件となるものであり、最も重要なパターンだという。

 次に同氏は、「学習サイクル」と呼ばれる4つのパターンを提示した。

 「心理学者によれば、人は次の4つのパターンに従って学習する。1つ目は『味見をする』(Test the Waters)というパターン。まずは、小さな試みから始めてみるということだ。2つ目が『振り返りの時間を持つこと』(Time for Reflection)。ちょっと立ち止まって、それまでやってきたことを振り返る。3つ目が『小さな成功』(Small Successes)。小さな試みの成功を1つずつ積み重ねながら前に進んでいく。そして4つ目が『一歩ずつ』(Step by Step)というパターン。すべてをいっぺんにやるのではなく、学習も変化も一歩ずつ進めていくことが大切だ」(ライジング氏)

 また同氏は「適切なタイミングで」(The Right Time)というパターンも挙げ、タイミングの重要性についても強調する。アジャイル開発のように革新的なアイデアを組織に導入するには、適切なタイミングを計ることが重要だという。

アジャイル導入の初期で従うべきパターン

 続けてライジング氏は、新しいアイデアを組織に持ち込む際、まず初めに適用すべき2つのパターンを挙げた。1つ目は、「とにかくやってみること」(Just Do It)だ。

 「アジャイル開発を導入しようとする際、多くの人は『まだ詳しく知らないから』『専門家ではないし……』と躊躇して、まずは時間をかけてじっくり勉強してからにしようと考えがちだ。しかし私からのアドバイスは、まずはとにかく『小さなピース』から始めてみることだ」(ライジング氏)

 誰しも、初めから専門家ではない。従って、まずは小さな範囲でいいから「始めてみる」ことが大事だという。

 2つ目が「食事をともにする」(Do Food)というパターンだ。周囲の人間を巻き込んで新しい試みを始める場合、最も効果的なのはちょっとした集まりを「食事とともに」開くことだという。

 「多くの調査で、食事をともにするとグループメンバーの賛同を得やすくなるという結果が出ている。私もこのパターンは大好き!」(ライジング氏)

 

食事をともにする

 

 さらに、周囲の強力な支援を得るためのパターンとして、同氏は「個人的な気持ち」(Personal Touch)と「感情のつながり」(Emotional Connection)の2つを挙げる。例えば、アジャイル開発などの新しいアイデアに対して、組織のメンバーは1人1人異なる考え、異なる印象を持っている。従って、メンバー個々の「なぜ私がアジャイルを始めないといけないのか? それは私にとって、どんな意味があるのか?」という質問に対して、エバンジェリストは1つ1つ答えていく必要がある。これが、「個人的な気持ち」というパターンだ。

 一方の「感情のつながり」というパターンは、相手を説得する際に感情に訴えることの重要性を説くものだ。ライジング氏は次のように説明する。

 「心理学の研究成果によると、人間はすべての判断を、合理的な思考によってではなく、その前段階の感情のレベルで行っているという。従って、アジャイル開発の導入を人に説得する際には、相手の感情や置かれている状況に基づいて行うべきだ」

 (次ページへ続く)

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説得相手のタイプ別に応じた説得術を

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この記事の著者

吉村 哲樹(ヨシムラ テツキ)

早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。その後、外資系ソフトウェアベンダーでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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