サハナの現状
現在、いくつかのボランティア団体に対してひょうごんテック、またサハナのサポートを早くから表明している日本IBMがコンタクトを取り、実際に利用されはじめている。なお、IBMでは全社的な社会貢献のセクションが、全世界の災害対応としてサハナの導入をサポートしているそうだ。
震災から2カ月かかった理由としては、サハナ自体の日本語化と安定化に時間がかかったことがある。PythonによるSAHANA Edenという実装が採用されているが、この日本語化は2010年の3月にはじまった。
また、最新でも安定版リリースに至っておらず、安定しているバージョンを開発者のFran Boon氏に訊くと「Trunkを使え! 機能があがって良い」と言われるが、Fran氏はハッカーなので思いついた機能をどんどん新規で実装してしまうため、まったく安定はしないという問題があり、結局日本版をフォークさせて独自にバグ修正を加えていたという。
「sinsai.info(のように広く利用されるツール)では、バグが出てもとりあえず立ち上げて、走りながら直していけばなんとか使える。サハナは現地で素人が毎日使うツールなので、ものすごく慎重に進めてきた」(野方氏)
進行中のプロジェクトとしては、まず仙台のボランティア団体で人材のアサインと拠点間の物資管理に利用される。ここではExcelのガントチャートを利用して手作業で人材を振り分けているが、IT化に際してそれに類したUIが望まれているため新規に追加する必要があるという。
また、ある自治体で避難者の管理を行いたいという需要がある。2カ月が経って避難所になっている施設を元の用途で利用するため、避難所から借り上げアパートなどに避難者を分散させているところがあるが、そうなると自治体から避難者への連絡・通達が途切れがちになってしまう。そこでだれがどこに避難しているかを管理したいというのだ。
別の自治体では、企業が救援資材として配布したタブレットPCを末端とした物資管理の需要もある。タブレットPCに搭載する発注ソフトウェアは別に開発し、全体の管理をサハナでやりたいという。このようにどれも機能や要求が異なり、それぞれカスタマイズが必要になっている。
また、そのまま利用が難しいく、インシデントやアセスメントという用語も説明しないとわかってもらえないところがあるため、最初は「トレーナーがいっしょに入って、トレーニングと合わせて導入してもらっている」(野方氏)という状況だという。
そのほか、サハナというソフトウェアのデモンストレーションも兼ねて、「Sahana Eden 被災地支援情報共有プラットフォーム」というページも立ち上がっている。そういった運用や開発を含めて、サハナ日本チームでは広くボランティアを募集している。