DevOpsのサイクルをサポートするGemini Code Assist

オープニングトークに登壇した安原稔貴氏は、「生成AIの活用には2つの視点があると思う」と述べ、「開発(運用)生産性の向上」と「サービス開発における付加価値」を挙げた。開発(運用)生産性の視点では、生成AIを使うことで、開発や運用に携わるエンジニアの仕事がどれだけ楽になるかに焦点を当てている。
2024年度第3四半期のEarning Callで、Alphabet CEOのサンダー・ピチャイ氏は「現在、Googleでは新しいコードの4分の1以上がAIによって生成され、エンジニアがレビューして承認されている。これにより、Googleのエンジニアはより多くのことをより速く実行できるようになる」と語った。この言葉が示すのは、GoogleでもAIが生成したコード全てをデプロイしていないことだ。エンジニアがレビューし、OKが出たものだけを使う。おそらく現時点ではこれが最も現実的な使い方と言えるだろう。
そして、GoogleがAIを活用してのコード生成で得た数々の知見や方法論を、全て盛り込んで提供しているのがGemini Code Assistになる。そして、コード生成の先の継続的な改善も忘れていない。Google Cloudでは、DevOpsのサイクル全体をサポートするため、Gemini Code Assistと合わせてGemini Cloud Assist(プレビュー)も提供する。その背景には、開発だけでなく、運用でも生成AIの力を使い、エンジニアがもっと楽に品質の高いアプリケーションを提供できるようにしたいという思いがある。

安原氏によれば、「Gemini Cloud Assistは、クラウド環境のアプリケーション運用をサポートするエージェント」だという。具体的には、クラウド環境、デプロイされているリソース、メトリクス、ログを分析し、アプリケーションの運用を行うエンジニアのニーズに合わせ、アクションにつながるインサイトを提供する。たとえば、エラーコードが出ているが、表示の詳細を見ても何をしたらいいかわからない。そんな時、Gemini Cloud Assistの「ガイド付きトラブルシューティング」機能を使うと、エージェントの指示に従うだけで、トラブル解決が進む。また、インシデントが発生した時には、その解決方法の提案をしてくれる。リリース後のプロセスは長い。そこもサポートしてくれるのがGemini Cloud Assistになる。
オンデマンドGPUで実現するコスト最適化
また、アプリケーション開発後のプロセスでは、セキュリティの担保、データマネジメント、データの可視化や分析も重要になる。Google Cloudでは、Gemini in Security Command Center、Gemini in BigQuery、Gemini in Looker、Gemini in Databasesの提供でアプリケーション運用も支援する。たとえば、データベースを扱うには技術知識と経験が必要だ。Gemini in Databasesを使うと、SQLコードの生成や修正だけでなく、Database Centerを利用してのデータベースフリートの最適化、潜在的な問題の確認、データベースの移行時のサポートの機能が利用できる。安原氏は「コード生成やプログラミングだけではなく、運用業務でもサポートできることを知ってほしい」とした。
生成AI活用における、もう1つの視点として安原氏が挙げたのが「サービス開発における付加価値」である。ここでGoogle Cloudが特に重視するのは、開発者体験の向上だ。同氏が取り上げたCloud Runはコンテナ実行基盤を提供する製品で、「とりあえず動くアプリケーションを3日程度で作りたい」あるいは「新しいサイトを1時間程度で立ち上げたい」などのニーズに応え、幅広い機能を提供している。
このCloud Runでは、生成AIアプリケーション開発でGPUリソースが必要になった場合に、オンデマンドでコストを抑えて利用できる「Cloud Run with GPUs」を用意した。最新のオープンソースモデルの使用感をテストしたいが、高コストの懸念から二の足を踏んでいた企業にとってはうれしい選択肢になる。Cloud Run with GPUsは、高速で起動し、スケールアウトも容易と、柔軟にGPUリソースにアクセスできることを特徴としている。
モデルに限らず、生成AIのテクノロジートレンドは変化のスピードが非常に速い。「生成AIのテクノロジーを試したいとき、その第一歩で時間や頭を使いすぎないことが大切だ。どうやって生成AIを動かすかに集中して開発をしてほしい」と安原氏は語っていた。