セールスとカスタマーサクセスの現場から見えた「顧客維持」課題
──まず、これまでのご経歴について、お聞かせいただけますか。
ベア氏: 私のキャリアの多くはセールスとカスタマーサクセスに捧げられてきました。特にAkamaiには13年間在籍し、最終的には10億ドル規模のビジネスを統括する立場にありました。この大規模ビジネスを運営する中で、「顧客維持がいかに収益基盤にとって重要か」を痛感しました。
当時、私が率いていた小規模なカスタマーサクセスチームを通じて、より良い顧客管理とエンゲージメントの必要性を強く認識していたのです。実は、当時のAkamaiは顧客維持率に課題を抱えており、解決策としてGainsightの導入を検討していました。私も2017年にGainsightの年次カンファレンス「Pulse」に参加し、CEOニック・メーダ氏のビジョンや製品の可能性に感銘を受けました。
その後、Zendeskでは2020年から北米エンタープライズセールス部門を率いる機会を得ました。主に中小・中堅企業市場で強みを持っていた同社において、エンタープライズ領域のビジネスを成長させるという挑戦は、非常にエキサイティングな経験でした。
CROの進化:部門最適から「顧客ライフサイクル全体」の最適化へ
──CROという役割はSaaS企業の成長と共に普及しましたが、近年ではテック業界以外にも広がり、その責務もマーケティング、セールス、CS、パートナーシップへと拡大しています。この変化をどう捉えていますか?
ベア氏: おっしゃる通り、CROの役割は大きく進化しています。当初は単純な「売上最大化」がミッションでしたが、現在は企業の持続的な成長ドライバーとして、より戦略的な役割を担っています。その背景には、顧客獲得から維持、拡大に至る「顧客ライフサイクル全体」を最適化する必要性の高まりがあります。
部門ごとにサイロ化していては、一貫した顧客体験を提供できず、結果として収益機会を逃してしまいます。CROは、マーケティング、セールス、CS、パートナーシップといった顧客接点を持つ全部門を有機的に連携させ、一貫した価値提供を通じてLTV(顧客生涯価値)を最大化する責任を負っています。
米国のカスタマーサクセスプラットフォーム市場は、2024年には18.1億ドル規模に達すると予測され、年平均成長率(CAGR)も20%を超える見込みです。Gainsightはこの成長市場のリーディングカンパニーとして、顧客企業の成功を支援する役割を拡大し続けています。
パンデミックを経て、デジタルカスタマーサクセスの重要性も増しています。対面活動が制限される中で、CROはオンラインで内部チームとの信頼関係を構築し、デジタル主導の戦略で効率的に顧客価値を提供するという新たな課題にも直面しました。
──役割が広がることで、職責が曖昧になっているという指摘もあります。
ベア氏: 確かに曖昧に感じられる側面もあるかもしれませんが、私の経験から言えば、現代のCROの核心的な役割は「組織全体の収益戦略を明確に定義し、実行する」ことにあります。変化の激しい市場を的確に捉え、競争優位性を確立するための戦略を描き、それを具体的なアクションプランに落とし込む能力が不可欠です。
米国市場は競争が激しく、Gainsightも常にイノベーションを取り入れ、顧客に独自の価値を提供することでリーダーシップを維持しようとしています。そのためには、マーケティング、セールス、CSの各リーダーと密に連携し、共通の目標達成に向けて組織を導く強力なリーダーシップが求められます。
CROの責務:目標設定、データ活用、顧客中心文化の醸成

──CROがその職務を全うするために必要な取り組みは何でしょうか?
ベア氏: まず、明確な収益目標を設定し、それを達成するための具体的な戦略と施策を立案すること。そして、各部門のパフォーマンスを継続的に測定・評価し、データに基づいて迅速かつ柔軟に戦略を修正していくことが重要です。
米国では、依然として顧客チャーン(離反)が大きな経営課題であり、多くの企業がその対策に注力しています。Gainsightも2024年に顧客チャーンに関するレポートを発表するなど、この課題への意識を高め、ソリューションを提供することに力を入れています。
さらに重要なのは、組織全体に「顧客中心の文化」を醸成することです。従業員一人ひとりが常に顧客の成功を意識し、自らの業務がそれにどう貢献するのかを理解して行動できる環境を作る。これもCROの重要な責務だと考えています。