「ビジネスの現場に携わっている者だけでも、日本のこの状況をがんばって変えていかなければならない」
―日本マイクロソフト 代表執行役 社長 樋口泰行氏は7月6日、同社の2012年度経営方針説明会にて開口一番、こう切り出した。
「日本社会に根づいた、日本の人々に愛される会社になる」と社名を"日本マイクロソフト"に変更し、品川の新本社に全社規模で移ってきたのが2011年度半ばの今年2月。そしてその直後に起こった東日本大震災。政治も経済も社会も混迷を続けており、いまなお収束する気配すら見えないこの状況において、同社はいかにして日本社会へのコミットを強めていくのだろうか。
デバイス/コンシューマービジネスへの挑戦
2012年度の目標を掲げる前に、樋口氏はまず2011年度の総括を行った。
「2011年度は着実な進化を遂げた1年。Windows 7、Office 2010などの導入が進み、クラウド事業の展開も本格化した。また、富士通によるAzureサービスの展開、トヨタとのテレマティクスにおける提携など、グローバルレベルでのパートナーシップも大きく進化した」と2011年度の業績を自身で高く評価する。
なかでも、樋口氏が2011年度の業績においてとくに強調するのは、クラウド事業の本格化だ。「体制強化、パートナーシップ推進、オファリング拡充の3つの面で大きく前進することができた」とする。殊に震災直後、被災地向けの情報サイトを無償でミラーリングするなど、同社のクラウドプラットフォームでもって数多くの復興支援に貢献した実績は内外から高い評価を受けた。
こうした昨年度の実績に加え、震災後の混乱する日本を支援するという企業責任を明確化した同社の2012年度の目標は「日本の"変わる"を支援し、お客様やパートナーからより信頼される企業になる」というものだ。
具体的には「デバイス/コンシューマー」「クラウド」「ソリューション」の3つを注力分野とし、日本の復興/再生を支援しながら、顧客やパートナーからの信頼をさらに得るべく邁進するという。
この3つの注力分野のうち、今回あえて打ち出した目標が「デバイス/コンシューマー」だ。
スマートフォン、スレートPC(タブレット)、次世代ゲームなどのコンシューマービジネスにおいて、マイクロソフトはいくつかの部分で競合他社に大きく遅れを取っている。国内市場においても同様だ。そこで日本マイクロソフトは米国本社に勤務していた香山春明氏を執行役 常務 コンシューマー&パートナーグループ担当として新たに迎え、デバイス/コンシューマービジネスの体制を大きく変更した。
「Xboxにおいてもディズニーなどの協力を得て魅力的なソフトウェアが揃ってきたし、Windows Phone 7も(いつとは言えないが)日本市場への投入を控えている。また、スレートPCも各社からぞくぞくと新製品が出る予定だ。コンシューマービジネスに関してはようやくモノが揃ってきたという感がある」という樋口氏、競合ひしめくコンシューマービジネスに本格参戦するための入念な準備中といったところだろうか。