SOA導入によりシステム連携を見える化
企業の情報システム部門は、様々な課題を抱えている。日立製作所ソフトウェア事業部の吉村誠氏は「最近ではDRへの注目が大きくなっているが、この2~ 3年の流れでは、日々変化する社会情勢に対応するためグローバル化、M&A、ITガバナンス、IT統合、IFRSなど多種多様な課題が経営層から情報システム部門に投げられている」と現状を把握している。
このような要求に応えるためには、全社システムを支える統合的な基盤の整備、業務要求への柔軟な対応、多種多様な情報の経営分析への活用、クラウドサービスの活用による“持たざるIT”などを実現していくことが有効と考えられる。しかし、多くの企業の情報システムは、それらの対応が困難な状態にある。
右肩上がりの成長時代には、各業務システム、グループ会社、事業所単位で情報システムへの投資が行われ、そこでの主眼は莫大な業務情報を早く処理することだった。それらのシステム連携はその都度作り上げてきたため、網の目状の複雑な形のシステムになっている場合が多い。吉村氏は、「SOA導入により、繋ぎやすいシステム実現の環境構築と、システム連携の見える化が可能になる。それは情報システム部門に求められている要求に応えるための近道でもある」と提唱する。SOA基盤は、業務プロセス連携だけのものではない。ビジネスプロセスを標準化し、標準のインタフェースでサービスをつなげることをSOAと呼ぶ。
システム開発にはパッケージ開発とスクラッチ開発の2種類があるが、スクラッチ開発では、業務担当者の頭で組み立てられたプロセスに沿って組み立てられるため、結果的に属人的になっている。
一方パッケージ開発では、作業をパッケージに合わせ、モノは付随しているマスタDBに当てはめるとはいうものの、プロセスはやはり属人的に組み立てられている。さらに連携はパッケージの外側にあるので、カスタマイズか作り込みになる。そこで手作りになるプロセス部分に標準規格に基づいたSOA基盤を適用すれば、PDCAのCを実現する仕掛けが実現できる。
フロントと業務のプロセス、データの三層で連携を実現
さらに日立ではSOAの幅を少し広げて、プロセス連携基盤は、フロントからデータ統合まで、いわゆる業務を行うためのプロセスはすべてSOAの対象だと考えている。
まずフロントでは、これまで個人が手順書を見ながら、アプリケーションを使って行っていた作業を見える化する。ミドルウェアを活用し、個人のノウハウを抜き出し、自動・対話作業フローや、画面情報連携などで作業プロセス連携を実現する。
業務プロセス連携処理では、エンタープライズ・サービス・バス(ESB)でアプリケーション、パッケージ、DBをきちんと繋げる。さらにマスタ同期、データ連携についてもプロセス連携基盤でカバーする。フロントからデータ連携まで一貫してサポートし、見える化できるのが、日立のSOA基盤の特徴になっている。SOA連携基盤の導入やサービスの標準化などにより、システム構築、改修における工数削減、効率的な連携、業務や作業プロセスの改善という効果が期待できる。
ただ、全体最適化へのSOAの適用は難易度が高く、時間もかかる。そこで吉村氏が提案するのが段階的導入だ。まずフェーズ1では、パッケージやアプリケーションなど現在の業務に影響のない範囲で、効果を見極めながら徐々に導入する。フェーズ2では、ここまでに蓄積したノウハウを少し広げ、業務プロセス連携基盤に使う。その上でフェーズ3、全体のマスタ同期、全体の作業プロセス連携というように全体適用をしていく。
「日立は、リスクの少ないところから効果を見極めながら全体に広げていくアプローチの方法を持っている」(吉村氏)。