震災後のIT対応の関心対象No.1は
「データのバックアップ&リカバリ」
大きな爪痕を残した東日本大震災。被害は甚大なものとなり、ITの課題として「計画停電の影響」「データセンターの影響」「運用の影響」などが浮き彫りとなった。そうした状況下で、68%以上の企業が現在のBCPでは不十分として対策の拡充や策定に取り組む意欲をみせており、とりわけ「データのバックアップ&リカバリ」への対応が38.4%と関心が高い。鎌田氏は「データさえ残れば復旧も可能だが、残らなければすべてが無になる。データを守る施策としてリモートアクセス環境の構築、データセンターへの移設や、バックアップサイトの構築などに関心が高まっている」と分析し、「“データを守ること”がIT部門によるBCPの最大目標」と語った。
これまでの国内におけるBCP策定は、半導体業界からはじまり、官庁による規格設定や啓蒙によって牽引されてきた。しかし、企業が自律的に結果事象と原因事象の両面からBCPに取り組むことが理想的だという。鎌田氏は策定から復興までの流れを説明し、「BCPの目的の明確化、そして有効性を継続的に確認・改善するBCM(Business continuity management)が不可欠」と力説した。
BCPのカギとなるデータバックアップ
節電対策とテレワークの推進
それでは具体的にどのような施策となるのか。まず考えられるのが、ITシステムそのもののバックアップだが、同じものを2つ用意することは負担が大きい。そこで、鎌田氏は実現可能なバックアップシステムのポイントとして、「遠隔地へのバックアップ」と「冗長性を最小化すること」の2点を挙げ、自社事例を紹介した。
そしてもう1つ、BCPを考える上で避けられないのが、計画停電などによる電力不足である。対応策としては、まずデータセンタでの省電力サーバへの切り替えや仮想化などの施策があげられる。さらに人や業務を分散するテレワークにも注目が集まっている。なおテレワークには文書の電子化やネットワークの他、端末側の対応も必要となるが、印刷防止などの情報漏洩対策を施したセキュリティPCや、データを持ち出さないシンクライアントPCといった方策が紹介された。
BCPへの取り組みは段階的に
こうした施策を考える上で、カギになるのが「全体最適化の中でのBCMによるリスク対策」だという。パフォーマンス向上のために全体最適化でITコストの低減を考え、セキュリティや災害への対策を織り込むことを考える。そのギャップを分析しながら両者のバランスを考え、成長戦略に伴うIT投資に照らし合わせながら、事業活動の基盤である情報システムをより盤石にしていく。その際のキーワードとなるのが「分散化と共同化」である。平時使用しないバックアップシステムのコストを下げるために、最小化による分散化、クラウド利用による共同化などが有効というわけだ。
こうした取り組みについて、鎌田氏は「短期&中長期的に、段階的に行われるものであることを意識することが重要」と語り、データセンターなどの基盤を対象に、ITのなかでもミドルウェアの活用でBCP実現を支援する方策について紹介した。
鎌田氏は、まず省電力化について言及し、短期的対策として、JP1/Automatic Job Management System 3による業務量に応じたシステム構成の最適化などについて紹介した。さらに、事業継続性の向上について、uCosminexus Navigation Platformによる運用オペレーションの手順の標準化などを紹介。仮想化導入やクラウドの利用でITリソースを迅速に提供したり、予兆検知で事前対応を行ったりするなどのソリューションも紹介した。
最後に鎌田氏は、震災から学んだITのあり方として、距離や多重化の重要性、システム状況の可視化、ミスを起こしにくい運用の仕組み作り、リモートアクセス環境の準備、運用の属人性排除および自動化、災害に備えた繰り返し対応訓練などをあげ、「企業の財産の最たるものは人。人が持つ情報やナレッジの活用支援を通じ、企業の活性化に貢献していきたい」と結んだ。